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薔薇ノ里と薔薇ノ海

四股名はこの際置いとこう。私は信二と言う名前で、それ以外の何ものでもないのだから。木村が、いや行司が仕切りたがる、いつものことだが今日はそれが妙に気に障る。塩を撒いたりにらみ合ったりしている内に時間一杯になり、(見合って見合って、八卦よい!)でぶつかってくるのはダンプカーみたいなでかい衝撃、バチッとした火花が目に浮かぶ。手の平で思い切り頬をはたきやがった。(のこった!のこった!)もう一度言うが四股...

ふたつめは今宵の月が僕を誘っていること1

(沖縄編10)風に舞い上がるミニスカート。色鮮やかな学生さんの肌着が彩りを添える平和祈念公園は、広大な敷地内に様々な記念碑を、沖縄で亡くなった一人ひとりの名前の入った記念碑を、塔を、資料館を、花畑を、それを包み込む広がる海から吹いてくる強い浜風によって、その存在を確かなものにしている。修学旅行生の群れが、やがて塊になってこちらへうねうねと近づいてくる。笑い声、頭を叩き合ってじゃれる。あんな時代がわ...

ひとつめはここじゃどうも息が詰まりそうになった7

(沖縄編9)我に返る。いつの間にやら老婆のまわりに人はいない。目が合う。老婆は何かをわたしに語りかけようとしている。胸が高鳴っている。苦しくて、わたしは怖くなって逃出す。今にも甦ってくるんだ。夢じゃない。わたしには受け止めるだけの体勢がなっていなかった。彼女はきっと話しても話しても話したりないんだ。今、頭の中を巡った事は、もちろん私の想像で、ディテールは知らない。でも、もしかしたらこういう女の子が...

ひとつめはここじゃどうも息が詰まりそうになった6

(沖縄編8?6・「ハンカチーフは万年雪の底に」)   配備された場所は土の中だった。建物はない。自然にできている、あるいは、土を掘り返して作った簡単な穴倉だった。すぐに泥だらけになる。名誉の汚れ、とか言って笑い飛ばす程度ではすまなかった。あれ、名誉の汚れと言って笑っていた頃はいつだっけ。ずっとずっと昔のような気がするけど。着替えても着替えてもすぐに泥だらけになる。それでも、ひめゆりの生徒たるものは...

ひとつめはここじゃどうも息が詰まりそうになった5

(沖縄編8?4・「ハンカチーフは万年雪の底に」) 沖縄は要所として有効な場所である。そこを拠点に、日本へ、中国へ、アジアへ、進行することができる。だからまず、次第に劣勢になる日本を、徹底的に打ちのめす為に、米軍は沖縄を占領する必要があった。 日本としても、本州に進行する米軍に十分対応できる準備を整えるためにも、沖縄で足止めを食らわせたかった。沖縄で食い止めている間に対米の防御体制を築けると考えてい...

ひとつめはここじゃどうも息が詰まりそうになった4

(沖縄編8?3・「ハンカチーフは万年雪の底に」)「うち、いっそのこと万年雪の底で死にたいわあ」「やめてよ」「だって凍えれるんやで、なんか気持ちよさそうやん」 その日の日差しがきつ過ぎたのだ。じんじんと痛むほど頬は焦がしていく太陽を恨めしそうに見たあと、幸子は唐突に言い出す。扇いでも扇いでも汗は吹き出るし、確かにもう、凍えてしまいたい気持ちは十分分かる。とにかくいま、現在、何か冷たいものが無性に欲し...

ひとつめはここじゃどうも息が詰まりそうになった3

(沖縄編8?2・「ハンカチーフは万年雪の底に」) 振動にはすぐに慣れた。 最初は怖かった振動も何発か打てばすぐに慣れる。意外と簡単に機関銃は操れる。もう、ちょっとした射撃手のつもりだったしあたしなんて。誰もがそう感じているのかもしれない。まだ力の弱い、物資も不足し、ろくに栄養だって摂っていないので、体力もない女学生でも簡単に操れるようにできている。目をギラつかせて、狙いを定め、引き金を引く。米兵め...

ひとつめはここじゃどうも息が詰まりそうになった2

(沖縄編8?1・「ハンカチーフは万年雪の底に」)1945年。「あかんわ、康成が、あかんわ」「なに?康成て。どうしたん?」「だから、あかんねんて、面白すぎんねんて」「はあ」 幸子は勢い良く教室の扉を開け、中に入る。 どっかどっかと存在感を示しながら教室を進み、席につく。とても乱暴に坐るので眼鏡がずれる。彼女はそれを人差し指で慎重に直す。その仕草はみんなからおっさん臭いといって笑われているが、どうも無...

ひとつめはここじゃどうも息が詰まりそうになった1

(沖縄編7)老婆は沖縄独特のアクセントで、わたしに花を買え花を買えとしきりにすすめてくる。ひとたば300円だから、ぜひ供えてあげてねー。日差しの強さが早くも皮膚を蝕んで、やがて内部にまで届きそうになったので、わたしは献花するために花を買う。買うんで、供えるんで、どうかお願いします少しでもこの紫外線を押さえてください。ぽっかりと空いた空間に響いていく修学旅行生のシャッター音。きっと何枚も何枚もシャッ...

僕が旅に出る理由はだいたい百個ぐらいあって6

(沖縄編6)町のいたるところにポスターがある。これは後で気づいた事だけれど、沖縄では知事選の最中で、何度か選挙カーに出会いましたのですが。ポスターを見つけました。恰幅の良いおじさんが、笑顔で腕こぶを作ってて、それにぶら下がるように、若い女がやはり笑ってて。ふたりは仲良し。選挙ポスターに娘さんだか奥さんだかがでてくるなんて、見たことないなあ。家族を大事にするんでしょうね。だから精一杯の誠実があの写真...

AUSTRIA(世界のドア)

Page16あえて隙間を作ることで、風通しが抜群になるわけだ。とムジ?クは説明してくれる。粗く塗られた白いペンキに囲まれて、ドアーはある。1854の数字。上のほうにチョークで文字が書いてある。「19?K+M+B+95」それは盗賊がつけた印で、間もなく今日もやってくるだろうよ。誰かに知らせたほうがいいんじゃないの?いいや、大丈夫、結末は知っているだろう?むしろ逆に知らせたりしたら大変だ、僕等はそっと見...

平成18年/上半期/直木賞

(三浦しをん作/まほろ駅前多田便利軒/一行目は)―「あんたはきっと、来年は忙しくなる」―とか言ってる間にもどんどん蕎麦を啜ってくるので決して油断してはいけないよ、とベテラン小林さんは「注ぎ」のコツを教えてくれた。...

僕が旅に出る理由はだいたい百個ぐらいあって5

(沖縄編5)飛行機を降立つと、とたんに汗ばむ、日差しの強さは楽園の香りで、紫外線をがんがんに届かせているから、そのイメージで汗がでてくるのです。実際は空港内はもちろんエアーコンディションがかかってますから、そんな違いは分からないんですが。でも。空港で働くみなさん、みな、半そでです。アロハです。ハイビスカスです。京都からきたわたしといえば、シャツにカーディガン着用ですから、冷気に対する厚い防御体制が...

I don’t know

ほら、大きな声だ割れるぐらいのI don’t know知らんふりしてみた騒がしい軋みだす新しい朝がくるぜんまい式の人形は手の鳴る方へ関係ない、完全に呼吸をやめるI don’t know深海泳いでく誰のせい?僕のせい?誰のせい?君のせい?ぜんまい式の人形は重なるようにI don’t know完全に呼吸をやめる君を忘れ全部思い出すその逆もしかりであるほら、大きな声だ割れるぐらいの...

5・7・5・7・7

木洩れ日のぬくもりを乗せブランコは揺れてあなたの町に近づく...

僕が旅に出る理由はだいたい百個ぐらいあって4

(沖縄編4)一方そのころ、各座席前モニターでは映画情報が延々と。そのうちなんか映画でもはじまるんでしょうね、とヘッドフォンつけて、待ってたんですがなかなかはじまりません。それでも始まる気配を見せつつの映画情報でしたので、わたしとしても引くに引けず、じっと待っていたら、映画情報に混じってだんだんとJALのキャンペーンやらCMやらがやたら流れてきまして、その中には三谷幸喜さんがやってるCMが各種あって...

うどんと素うどん

うどんは嘘つきだ。だって自分はアラブの石油王だと言い張るし、実家に帰ったら30人の召使がいて、とても美味しく茹でてくれるんだと言うから。刻み葱とてんかす散らして汁に沈んでいるうどんが石油王なわけない。身の程をわきまえろと、天麩羅によく言われる。もう誰もお前の話なんか信じない、弁護士の俺が言うのだから嘘ばかりついていると痛い目に会うぜ。実際うどんの話を誰も信じていない。かまぼこも油揚げも七味唐辛子も...

僕が旅に出る理由はだいたい百個ぐらいあって3

(沖縄編3)空。雲が下にある。雲の上にいる。かの高木ブーはこんな気持ちやったんでしょうね。合唱、あ健在でしたっけ。どんどん昇っていく飛行機が雲の上に出て安定するまで、きりっとした微笑でわたしたちを見守ってくれているのが客室乗務員の面々。もうスチュワーデスで、ええ気がするけどね。まあ、常務員の面々が、ものすごい丁寧に、説明案内してくれます。しかもどんなときも常に微笑ですよ。プロフェッショナルやなあ、...

僕が旅に出る理由はだいたい百個ぐらいあって2

(沖縄編2)はしゃぎまわっとる場合ちがうでえしかし、と我に帰りまして、搭乗手続きとやらをいたします。航空会社はJALを指定、他の航空会社との違いは全く持って知りませんけど、もうこれは人任せです。JALは「慈英&ローソン」の略語なんだというぐらいの知識。「川平慈英がプロデュースするローソン弁当」それがJALだとわたしは解釈していますが、きっと、食べたら自然と笑顔になってしまう、みたいな弁当なんでしょ...

Edeltoft,DENMARK(世界のドア)

Page15レンガが組まれた壁、真っ白の窓、、ギンガムチェックのカーテンがふわふわ、すぐ上の29の数字、中央に、赤茶けたドア?の青っぽい枠、それらを受ける黒地、どこかコケティッシュで、いじわるそうで、でもセクシーな悪魔の家。悪魔といっても、わたしたちに対して命題を持ちかけて魂を奪う、というようなことをする悪魔ではない。悪魔の中でも最も人間に近い部類の、つまり人間から悪魔になったものたちの家。だって...

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なゆら06

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