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溺れた子猫は藁をも掴む。それは本当だ。ぷかぷか浮いていた腐った海藻を懸命に掴もうとしていたのだから。誰ひとりとして何もできなかった。だって強い雨は降っているし、波は強かったし、何より子猫は誰の飼い猫でもなかったし。それでも、やはりできることなら助けてやりたいのは山々だが、と誰もがそう思っていたに違いない。私たちが乗っている船には、浮き輪を投げて猫がそれに掴まるかどうかは置いといて、なぜか投げ込むべ...

なぞれば西日が落ちてくる

冬の昼の誰もいない居間は、冷たいフローリングの光沢にある音が静かに木霊している。子は、外で、凧揚げなんかを飽きもせず続け続けていやがる。声変わりの遠い甲高い声がかすかに聞こえてきて、冷たいフローリングの光沢にある音が聞こえなくなる。その音はもしかしたら俺の耳鳴りかもしれない。君が、子とともに外にでていた君がこの居間に戻り、湯を沸かし始める。マグカップを棚から取り出す。どうやら君は珈琲でも飲むつもり...

Cornwall,ENGLAND(世界のドア)

Page17黒いふちに囲まれて白いドアー、9の数字が上のほうについている。光沢のあるよく磨かれたドアノブ。ドアーの両隣に花の鉢が吊り下げてある。花の鮮やかな桃色はそこだけ浮き上がって見える。ドアーの両隣にある桃色を頼りに、はるばる遠くからやってくる少年、少年は走って来たものだから、はあはあぜえぜえ、ひどく息を切らしている。ドアーをノックする。その音だって、はあはあぜえぜえ、駆け出しそうさ。...

散文を書く、あくまでもアリクイとして

我輩は猫であり、また、アリクイでもある。猫とアリクイ、あなたは全く違うのものだと思うかもしれない。しかし、我輩は猫であり、また、アリクイであることに間違いはない。そこに疑問を挿みこむ余地は、ない。とにもかくにもそう理解してもらいたい。理解していただけたなら、話を進めよう。まず我輩が今このA4サイズのルーズリーフに、一本税込み210円のボールポイントペンにより文章を書いている理由である。このボールポ...

象の墓場

象は、僕らが動物園なんかで見るそれでなくて、自然の中でありのままに生きている象は、自分の死が近づいたのを知ると、みな同じ場所へ向かうんだ。本能のままに歩き続けてある日たどり着くその場所は、ふわふわと穏やかな風が吹いていて、時々雨が降るけれど、決して強いのでなくて、やわらかい布のように、肌をしっとり濡らし、食べ物もたんとあり、何より、世界中から集まってきた同じ境遇にある仲間たちがいて、ちょっぴり俗っ...

こんな夢を見た070129

こんな夢を見た。旅館のようなところで、右小指で右耳をほじっていると、奥に詰まっていた、丸まった白い紙がぬぬぬぬぬとでてくる。白い紙は何度でもほじるたびに勢い衰えずにぬぬぬぬぬとでてくるから、わたしは少し心配になる。耳に詰まっている白い紙の終りが分からず心配になる。長い白い紙がでても、別段気持ちよくもなく、ただ何かがぬぬぬぬぬと出ているという感じ。旅館で食事がはじまりそう。目覚め。...

5・7・5・7・7

繋いでる右手の確かな温もりをあかんべえして濁すのでした...

こんな夢を見た070127

こんな夢を見た。私はお母さんとなり、子をあやしている。子は二匹、上が女で、下が男で、こいつらにずいぶん手を焼いている。ぐずりつづけてなかなか落ち着かない。わたしはいたるところを舐めてあやす。それでも子はぐずる。二匹とも。天敵がやってくる気配、緊張。獣臭、これはわたしのもの。遠吠え。目覚め。...

昭和47年/上半期/芥川賞

(宮原昭夫作/誰かが触った/一行目は)―休み時間、ジュニア雑誌に読みふけっている中学三年生の歌子の、長いお下げ髪を、隣の席の悦子が見ている。―「その枝毛、うちの家系図そのもの、まさかこの子、知っているの?」と思いながら。...

3分間には訳がある

カップラーメンが出来上がる瞬間に立ち会うためには、すくなくともあと3分この場所にいなければならいないということである。なぜ3分なのか、麺の量や固さ乾燥度なんかを調整すればいかようにもできたはずであるなのになぜ。時間はあまりないがとにかく考えてみる。3分間という長さ、何ができるというのか、蛍を見に行くには短すぎる。ああ、今の場合の蛍を見に行くというのは、大便をするという意味である。これは、明治から昭...

毛布の必要

冬の空が僕の背中を追いかけてくるんですかなしみに沈み込んで隠れたけど見つかった毛布のない世界に行きたいなぜなら毛布のない世界じゃ君が温めてくれるから間違ってますか?思い過ごしですか?イエス・ノーをはっきりして欲しい毛布のない世界に行きたいなぜなら毛布のない世界じゃ君が温めてくれるから毛布のない世界はどこかにあるかな毛布のない世界なら君が温めてくれるのに踏みつけて厚い氷を割ったハイカラが笑ったら僕に...

秘密

帰り道、振り出した雨がかなり激しくなったので、ちょうどそこにあった民家の軒下に雨宿りをしもう動けん、と言い出す彼女に対して、それでも、結局濡れても帰らないといけないのだからと、説得しようやく歩き出した時、前から見慣れた車が近づいてきて、僕たちの隣で停まって窓が開き、濡れるでしょう乗りなさい、と義母が声をかけてきた。彼女はここぞとばかり「ほら、わたしが言うとおりあそこにいたら、濡れずに住んだのに」と...

平成15年/下半期/芥川賞

(綿谷りさ作/蹴りたい背中/一行目は)―さびしさは鳴る。―すると愛しさも鳴る、負けじと切なさと心強さも鳴る。...

昭和45年/上半期/芥川賞

(古川高麗雄作/プレオー8の夜明け/一行目は)―毎朝、私たちは、ヴィトミン独立歌の斉唱で起こされる。―起きたら、すぐにタクトを振って斉唱を止めないと、ご近所さんに怒られる。...

手を離してみようぜ冷たい花がこぼれ落ちそうさ

(沖縄編35)降立った神戸の風は冷たい。街に人が溢れている。パンを買う。バスを待つ。空はこんなにも晴れ上がっているのに、あのぬくもりはどこへいったのでしょうか。あれから僕たちは何かを信じて来れたかなあ、のメロディで口ずさんでみる。「この空はあの島につながっているのかなあ」「当たり前じゃボケ」ああこの忙しなさたらもう。完。...

僕が旅に出る理由なんて何ひとつない6

(沖縄編34)盆地暮らし23年燃え尽きて2年、なので席に座ると、前に座ってた連れが気分悪いってトイレに駆け込んでく。古酒をたらふく飲み、頭を揺らし激しく揺らしたもんで、酒が回りまわったようで、吐いててん。「ちょっ、もう、か、帰るわ」「そう?」わたしは名残惜しそうに答えます。「みんな、まだおったらええよ、ひとりで、帰るから」「いや、そういうわけにもいかんでしょう?」「いや、悪いし、ごめんねえ」「そう...

僕が旅に出る理由なんて何ひとつない5

(沖縄編33)彼らの、歌う時の表情がいい。微笑を含む口元がきりりとしまりメロディを発する時、真っ直ぐに深い所にまで届くのです。そしてこちらも負けじと、わたしたちの、踊っている時の表情がいい。「さあもっと踊ろうね!」という言葉のアクセントはあのアクセントで、「ええ、踊るー」と言う言葉のアクセントはこのアクセントで、それらが入り混じる空間が心地よかった。島に生きる人々の血が流れる音楽がオーロラみたいに...

昭和19年/上半期/芥川賞

(八木義徳作/劉廣福/一行目は)―劉廣福を工人として雇い入れるについては、最初から難色があった。―劉廣福は雌だし、というか、そもそもミドリガメだし。...

宙返り

永久ロケットに乗って旅に出る月面に浮かぶあの青い球体は呆れた僕らを抱いてありったけのエネルギーで回っている乗り物で何度宙返りしたら生まれ変わるんでしょう手に入れた無重力のシャワーを浴びて声は無限に広がって届くのです呆れた僕らを抱いてありったけのエネルギーで回っている乗り物で何度宙返りしても君の事忘れないよ宙返りでもと戻り...

僕が旅に出る理由なんて何ひとつない4

(沖縄編32)気づけば脳がぐわんぐわんに揺れ始めていた。確実に。ぐわんぐわんに回っていた。何や知らん民謡か、そんな独特の旋律を持つ歌が流れる。それをきっかけにわたしの頭の中で理性と常識をつないでいる線が飛んでしまう。生まれて初めての感覚だった。気づいたら手がかくかくと動き回っていた。足が止まりそうになかった。ので、私は、それら各自の自由に身を任せることにした。すでに逆らう事は出来なかった。何かすご...

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Author:なゆら06
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