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昭和62年/下半期/芥川賞

(三浦清宏作/長男の出家/一行目は)―僧になりたい、と息子が言い出したときには、驚いた。―私もちょうど尼になろうとバリカンで刈っていたところだったし、すっごい気があうじゃんやっぱ親子。...

カメレオン・ガール

わたしはカメレオンみたいに姿を隠す。山手線で、東急ハンズで、中央公民館で、ことあるごとに姿を隠してしまう。わたししか知らない穴倉の中に入ってしまうのだ。そうすれば、面倒な事は何ひとつ起こらない。これは、わたしが見つけた生きていくうえでもっとも有効な方法なのだ。隠れてしまえば、それでおしまいだ。誰もわたしの存在に気づかないし、仮に存在に気づいたとしても、カメレオンのようにすぐに隠れてしまう女に何かを...

第89回高校野球選手権テーマ「甲子園に、恋をした。」

リー、リー、リー、バックそのあとでノースリーからデッドボール宙に浮いて代走、最後の夏、三年生、最終回ツーアウト一二塁(太陽よ焦がせ18の頬、君の声届くはず かち割り氷のようにすぐ溶けてなくなった)カムバック!リリー、夢にまで見た弾んで、ライト前に転がってヘボいコーチはストップモーション勢いつけて駆け抜けろランナー!ノーバウンド、鉄壁の壁、すべれ!泥まみれヒーローさ君の事だけ見ています赤い頬した少女...

昭和43年/下半期/直木賞

(早乙女貢作/僑人の檻/一行目は)―暴動が起こったのは当然である。―バナナはおやつに入る、と決められたのだ。...

NY市公認コンドーム

 ニューヨーカーならみんな携えてるぜ!(ニューヨーク市公認コンドーム) 市役所其の他関係部署にいけば無料でもらえるぜ!(ニューヨーク市公認コンドーム)破れない止まらないルルルル公認コンドーム?♪ フライデーナイトにあるパーティーにゃ(出会いを求める男女がわんさか) フライデーナイトにあるパーティで(出会ってしまった男女がわんさか)破れない止まらないルルルル公認コンドーム?♪ご利用は計画的に?♪...

ロケット

ひとりで彼に会いにいくかすかな羽音が聞こえてきた雲と雲の間を横切るロケットが見えるそのすぐ下を横切るカラスの群れそのすぐ下の缶詰工場に親子連れさて私が、ポッケの中で空を掴もうとしていることをいったい誰が知っているでしょう...

無花果味のガム噛んで

真っ暗闇、の時分僕は自転車をこいで、人の波に乗る。花火大会のはじまる少し前、その波は徐々に大きく、高密度になり、やがて僕が自転車をこぐことも出来ないほど人が溢れる。橋の上、ここから絶好のポイントで、花火が真正面に見える場所、歩行者天国と成り果てたこの道に人々はすすすとござを引き、腰を下ろし、焼き蕎麦なんかを啜る。ビールを飲んで、から揚げを齧る、檸檬はあるか、檸檬はあるかという怒号。僕はうっとうしい...

美容整形を受けたいのですが

虹がとことこ歩いて私のクリニックにやってきて、いかにもつまらないという表情で、深いため息をつき、それから早速以下のように依頼した。『見られることに飽きたのです。いつもいつも、虹だ虹だ、わたしにプライベートはないのか!虹を追いかけろと言われて、追いかけてくるから、逃げなしゃーないし、走りつかれたのです。だから、だから美容整形とやらを受けたいのですが、受けてうんと目立たないものに、本格的に目立たないも...

時間が綿菓子みたいに膨らむ

好きですと伝えたら少し気が抜けて、あなたの返事待ってる間もなんだか自分のことでないような気になって、あたしは通り過ぎる電車の流れる明るい窓なんかを見ていました。一瞬だけ見える窓の中では大勢の人がぼんやりとこちらを見ています。いや、こちらと言ってもあたしやあなたを見ているわけではなくて、窓の外の闇の中のかすかな風景なのでしょうけど。あたしは、あなたに聞こえないように慎重にため息をついて、そして、再び...

絵馬にシール恋の願いも個人情報

こんな絵馬が私の家の近くの神社にあった。「ナメック星に戻れますように」いる!奴が近くにいる!それで、私はきょろきょろと色の緑の人を探して、街をうろついている。...

ペット店が全焼犬70匹など死ぬ

そのペットショップは全焼したけれど、そのペットショップに動物達がどれぐらいいたのか、僕にはわからないけれど、ただひとつわかっていること、焼け死んだはずの動物達の死骸はひとつもなかったということ。ね、不思議でしょ、と中村くんは言う。確かに不思議ね、と私は答えてみる。そして、それ、ただ主人がペット連れて夜逃げしたんじゃないの、とかそういう話でないことはわかっているからあえて何も言わずに、ジンジャエール...

ハックショイ!

ハックショイ!という爆発音のあと、あなたはコンチック、ショウオ!と怒鳴り、向かいのおばさん、ひどく驚き身体をびくりと痙攣させる、それ見てお前!と叫んだ旦那の、伸びた左手藁をも掴む、当然藁など市電にはなく、代わりに掴んだふくよかな胸、揺らす女の束ねた髪を、ぐいつと引かれ、女の傾く身体がどすんとネクタイ締めた、男の眼鏡を揺らして落とし、めがねめがねと這い蹲って、探せばあたしの、フリフリスカート潜り込も...

世界はそれを愛というんだぜ

ほんの小さなすり傷を、まるで不治の病のように大袈裟に考える。そして老婆は救急車を呼ぶ。ひとり暮らしで、身寄りはいなかった。たいていだれもがそうであるように、昔、彼女にはひどく愛した男がいた。しかし、男には妻がいて子供がいて、とにかくそういう複雑な関係だった。やがて、突然の別れが訪れる。男は妻や子供を選んだのだ。妥当な判断といえるのかもしれない。意地の悪いものであれば、いや、賢いものであれば、男に対...

昭和47年/上半期/直木賞

(井上ひさし作/手鎖心中/一行目は)―江戸へ来てからひと月たった。―ふんどしがやけに匂う。...

平成16年/下半期/直木賞

(熊谷達也作/邂逅の森/一行目は)―獣を殺す旅だった。―だから、きびだんごにはあらかじめトリカブトを混ぜておいた。...

二月

銀杏じじいが対岸でオルガン片手に対岸で『我は海なり絨毯をひっくりかえせど 貝殻の小さな音は鳴り止まぬ』と歌えや踊れや対岸で銀杏じじいが対岸でアップルティ片手に対岸で『我は海なり武者修行してたあの頃 素うどんはするりするするのど越し豊か』と叫べや翳せや対岸で俺は銀杏じじいの対岸でひどくうんざりそれを見ていた二月...

「胸元気にせず」健康診断専用ブラ発売

待合室で、並んでいると横の中年は、いや、中年に見えるけれど案外若いのかもしれない、とにかく横の男が、ちらちらと確実にこちらを見ている。別に裸でいるわけでなく、Tシャツを着ているのだけど、ピッタリとしたヤツなので、胸のあたりが気になっていた、ところに舐めるようなその視線だ。わたしが男の方を向くと、ごく自然にあさってを向いて、思わず口笛を吹かんばかりだ。怒鳴り散らす勇気なんかないし、悔しくて、下を向い...

マックシェイクと轆轤首の憂鬱

100円あったらマクドナルドへ。それは人間だって轆轤首だって同じだ。で、100円があった。轆轤首の足元にあった。それは人間が落とした100円玉だったが、とにかく轆轤首の足元に100円があった。すなわち、それはマクドナルドに行かなければならないということに相成り、轆轤首はその原則に従う。断っておくと、轆轤首といっても年がら年中首を伸ばしているわけではない。首を伸ばすのは、天敵に出会ったとき、天敵に遭...

音も値段も「妥協なし」315万円のスピーカー

パイオニアのそのスピーカーを通すと空気が変わった。なんというか、しゃん、とするのだ。また、言葉が言葉らしく聞こえた、巧く説明できないけれど、当たり前のように「おはよう」は「おはよう」と聞こえ、「グッドモーニング」は「グッドモーニング」と聞こえ、「グーテンダーグ」は「グーテンダーク」と聞こえる。スピーカーのせいか、無性にあたしは「グーテンダーク」と発してみたくなった。「グーテンダーグ」が何語で、おは...

サイケな気分

蛇の身体は色鮮やかで、回るライトが照らすたびに光る。蛇は踊るでもなく、だけどフロアの中央にいて、時々舌をひょろろと出してはしまい、踊る女や男を見ている。獲物を狙う野生の蛇の顔に戻っているのかな。その半径1mはぽっかりと空いており、時が止まって見える。で、24時間やっているマックドナルドになだれ込み、轆轤首の好物とか言われるマックシェイクを頼んで飲んでいると、蛇が、疲れたよ、という表情で、私の膝に乗...

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なゆら06

Author:なゆら06
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