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平成17年/下半期/直木賞

(東野圭吾作/容疑者Xの献身/一行目は)―午後七時三十五分、石神はいつものようにアパートを出た。―ただし、身につけていたものは、白のソックスのみだった。...

全速力

そうして、その夜、太一は手を千切れてしまいそうなほど激しく振り、そして、その動きに、明らかについていけない足を、それでも懸命に進めていた。流れ去っていくようなビルの灯かりが滲んで見えたのは、気のせいではなく、実際滲んでいた。彼は大粒の涙を拭うことすら忘れ、頬に滴らせ、お世辞にも速いとはいえない速度で、夜の街に飛ばしていたのだ。彼とすれ違うものは、大泣きしながら走っている青年を見て、一様に驚いた表情...

くぐる

ここから見えているのはふつふつと湧き上がるマグマだ。まだぐるぐると動き回って包み込もうとするから、私はすんでのところで後ろへ飛びのいて、その時の勢い強すぎて、とととととととととと、空間はどこまでも続いていくよ。誰か私の弾丸みたくなってしまった身体を受け止めてくれる人はいないのでしょうか。ふふん、花が舞っていて、ゆらゆらと舞っていて、私の後頭部を撫でた優しさが切ない。さて、100%のぽんかんジュース...

昭和51年/上半期/芥川賞

(村上龍作/限りなく透明に近いブルー/一行目は)―飛行機の音ではなかった。―姉の長い放屁だった。...

落ちる

私は光に弱く、弱いというと虫みたいでいやだから、苦手と言っておく(同じか)、光があると眠ることができない。蛍光灯を消して、カーテンを閉めて、暗闇を作り出さないとうまく眠りに落ちることができない。ほんの少しでも光が目に入ってくれば、とたんに目覚め、そして眠ることができなくなる。まことに不便な性質だ。しかし、裏を返せば、光さえなければどこでも眠れるということだ。腕で目を覆う、包み、隠してしまえば、そん...

5・7・5・7・7

円を描く手の内側に赤く赤くわたくしのために流れよ血潮...

桃は流れてくるためにある

どこを見ているのか細かくは分からないけれど川であることに間違いはない。姉はドアーから少し入った所に座って、すっかりぬるくなったコカコーラの缶を傾けてた。くえっ、とゲップを遠慮なく出して、また同じところを見つめている。「流れてくるかな、桃」と音を立てないように近づいた私に突然話し掛けてきたので、正直言うとかなりびびった。「は?」驚きを隠して私は答える。「桃が流れてくるような気がするわ」「はあ?」「桃...

平成8年/下半期/芥川賞

(辻仁成作/海峡の光/一行目は)―陸に上がった後も海のことがいつまでも忘れられない。―そう言うと蛸は遠い目をして、グラスを傾けた。...

欲望471?480(高笑いの騎士)

・象牙の箸を持つ・サファイアの瞳を狙う女泥棒・鮮やかなトリックで警察を唖然とさせる・学校の机の目立たない場所に名前を彫る・20年後に見に行って名前を発見する・名前の横に好きな人の名前があるに驚く・白魔術を使える・黒魔術を使える、けど使わない・魔術なんざ、おら、信じねえ・大都会に高笑いを響かせる...

遠く汽車の窓辺からは

崩れ落ちた屋根瓦の、点々としたシミの、剥き出しになったトタンの、えもいえぬ叫びが聞こえてくるようで、電線でつながった映像がふわふわと波状に飛んでいて、それを掴んでいる男がケータイを耳にあてていて、彼は憤怒を顔に出し、声に出して吐き出して汗をかき、「ええか、300万や、300万で手をうて。」にあ、と笑う。すべてを包み込んで染めて見下ろすくすんだ空の色が窓辺から見えていて、その向うからあいかわらず、春...

ビーバー、欲望のままに

「私が出しっぱなしにしておくはずないでしょ、ということはあなたが積み上げて埋もれさせてしまったということ以外考えられないじゃないの、それとも、見ず知らずのビーバーが私たちの知らない間に部屋に上がってベル・アンド・セバスチャンをヴォリュームマックスにして聞いていたと言うの?ビーバーがベル・アンド・セバスチャンなど聴くものかしら。ビーバーにギターポップが分かるものかしら。バカバカしい。」 そうつぶやき...

昭和63年/上半期/直木賞

(西木正明作/凍れる瞳/一行目は)―「こんなに荒れる日に、無理してでかけることはないんでないかい?天気予報だって、明日の午後からは晴れてくると言ってるのに」―「さあこっちにこいよ、いっしょにトゥギャザーしようぜ」...

私を薬屋へ連れて行って!

角の薬屋は誰にも期待されずにいつも開いている。客は誰一人としてこないのだけれど、必ずおばは店を開ける。それが決まりなのだと私に説明してくれた。決まり?私が聞き返すと、そう、決まりなんや、と同じことを言うだけで、それ以上細かいことを教えてはくれない。店はおばとおじが作り上げたもので、その昔は繁盛していて、何人かの命も助けたんや、とおばは得意そうに教えてくれた。時代が移り、24時間開いている薬屋がたく...

平成15年/下半期/直木賞

(江國香織作/号泣する準備はできていた/一行目は)―朝、電話で隆志が、私のでてくる夢をみたと言う。―お前はらっきょうを食いすぎてらっきょうの精になってしまったんだ。...

昭和41年/上半期/直木賞

(立原正秋作/白い罌栗/一行目は)―寺石は傾斜のゆるい坂道をのぼっていた。―ただし、身につけていたものは、白のソックスのみだった。...

平成14年/上半期/直木賞

(乙川優三郎作/生きる/一行目は)―(重五には間に合うだろう・・・・)―(間に合う、という概念から覆すならば)...

ランナウエー

肩車を僕が好きなのは大きな肩に乗っかって大きな空を仰いでふらふらふら飛んできた象の影を追うバイバイバイ言葉を持て余して右腕錆びついて後頭部にサーチライトあふれだす願いが韻を踏んで揺れて並んでいる午前中えもいえんまま離れるできるだけランナウエー凍りついて仕方ないな振り返る空手チョップをかわした相撲レスラーの恋人が泣いているあなたは私の身体を抱いて冷たいねって言ったのよあいにくマイクロフォンに届かず立...

こんな夢を見た070703

こんな夢を見た。うねうねと蠢く。目覚め。...

平成2年/下半期/直木賞

(古川薫作/漂泊者のアリア/一行目は)―御影石で十字架をかたどったネイル・ブロディー・リードの墓は、関門海峡と日本海の響灘を左右の眼下に望む丘の上にある。―寝ぼけてのっそりと出てきたネイルは湿っていて少し臭い。...

昭和54年/上半期/直木賞

(阿刀田高作/ナポレオン狂/一行目は)―狂気と正常とは、ある明確な一線を堺にしてキッカリと左右に峻別されるものではあるまい。―が、俺が分けてやる、と不可能に挑戦する天才外科医がメスを持った。...

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なゆら06

Author:なゆら06
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