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ごめんよ、ドアー

ぎいいと音を立てて開く。ぎいい、ぎいい、こだました。私はその音が嫌いだ。それは、音自体が嫌いなのではなく、音の後にある、診察が嫌いなのであって、音はまったくのとばっちりにすぎないのだけれど、少なくとも、その後にある診察の嫌さを物語っているようなぎいいなので、その辺はドアーも認めてくれるだろうと、私は勝手に思っている。...

5・7・5

欲望の深さ増しても宿はなし...

店はいつも開いている。客は誰一人としてこないのだけれど。必ずおばは店をあける。それが決まりなのだと私に説明してくれた。決まり?と私が聞き返すと、そう、決まりなんや、と同じことを言うだけで、それ以上細かいことを教えてはくれない。店はおばとおじが作り上げたもので、その昔は繁盛していて、何人かの命も助けたんや、とおばは得意そうに教えてくれた。時代が移り、24時間開いている薬屋がたくさんできて、おばの薬屋...

昭和11年/上半期/直木賞

(海音寺潮五郎作/天正女合戦/一行目は)―星ひとつ見えぬ冬の夜の闇もこれほど黒くはあるまい。―胡麻の結束力を侮っていた。...

宮川さんの貧乳

宮川さんは貧乳だ。明らかな貧乳なのに、本人は爆乳のつもりなのだろうか、胸を強調するような服をよく着ている。それ自体は何の問題もないが、時々その貧乳を聴衆に晒す。うふふと言って突然ずらして乳首を見せ、そして、生唾を飲む音が聞こえて、風のように去っていく。それが唯一の愉しみなの、と言う。宮川さんは嬉しいのだ。貧乳でも乳があるということが嬉しくてたまらないのだ。その嬉しさを分けているだけなのだ。いい人な...

あまのじゃく

あまのじゃくは弱虫で意地っ張りで泣き虫で半ズボンで半そでで甘党で辛党でカレー派でシチュー派で美味しいものは最後に残す派で夏休みの宿題は最初に終わらせてしまう派で終わらせてしまってから海にきれいな貝を探しに行こうとする派で運動会の前の夜は眠れなくなって友だちに電話をかけて夜更かしし遅刻しそうになって無邪気でありのままで意地っ張りで泣き虫でやっぱり弱虫です...

平成10年/下半期/芥川賞

(藤沢周作/ブエノスアイレス午前零時/一行目は)―表面が鈍い鉛色になると半熟卵になる。―生卵師匠は、鉛色になりながらそう教えてくれた。...

カーブ

クローバー畑のようになっていたので、これぞチャンス、とばかり私は緑の上に座り込み、4つ葉がついたクローバーをくんくんと探す。かき分けかき分けしていると私は自分がてんとう虫にでもなったかのような感覚になってくる。いや、確かにその時私は巨大なクローバー畑を進む小さな虫だった。4つの葉を持つクローバーは食べることで不死になれるという言い伝えを聞いたため、その言い伝えを信じきって旅に出た虫だった。そうして...

凛、と言う名の私が尊敬する女の人は、本当に凛としていて、きれいでかっこいい。だから、その人に会えると胸が高鳴る。彼氏と会っている時の高鳴りとは違って、遠い昔の恋心のような淡い高鳴りだ。その気持ちに気付かれることないように私は冷静を装っているけれど、きっと、彼女には何にもかも分かっているのではないかと思う。だって、彼女は私と目が合うと、ふふふ、と笑うし、それは、可愛い子ね、と言われているような気がす...

昭和56年/下半期/直木賞

(光岡明作/機雷/一行目は)―昭和十九年十一月十六日。―あ、違うわ、昭和十九年十一月十七日。...

7月7日雨

サッカーゴールに括りつけられた竹の葉につけられたいくつかの願いが濡れて、泥色の水たまりの中にハラハラと舞い落ちる。昼過ぎからずっと、そうなるであろうと私たちは人事のように話していたし、予想通りに雨が降り出しても、特に何も感じなかったけれど、いざ、はらはらと落ちていくのを見ていると、どうしてか取り返しのつかないことをしたかのようなそんな気がして居たたまれない。落ちた短冊はやってきた誰かに踏まれ八つ裂...

昭和27年/下半期/芥川賞

(五味康祐作/喪神/一行目は)―瀬名和幻雲斎信伴が多武峯山中に隠棲したのは、文禄三年甲午の歳八月である。―「よお、信伴、掘ってるかい?」と、ある茸を食べてからというものの、モグラが気安く話し掛けてくる。...

ビルの上の観覧車

あんなに高い所に行っていったいこれから先、どうすればいいのだろう、と君はつぶやいた。ぼくはそれを、聞こえなかったふりをして、目を閉じたままでいた。ゆっくりと、いや、じりじりと時間が流れる。それから何も言わなくなって、重いため息だけが聞こえる。分かった、と僕は突然言ってみる。「何が?」「何もかも全部分かった」「何も分かってない」「分かってないかもしれないけど、分かるようにする」「そんなんじゃない」や...

あれも欲しいこれも欲しい全部欲しい

あたしが持っていたものは全部あなたにあげるから、全部全部完全にあたしのものはあなたのものだから、もう、返さなくていいから、よければつかってください。と言った。言ってしまってから、しまったと思った。あたしの手元に何も残っていない。もしかしたら、いいやそんなことはできないちゃんと君のものは返すよ、というような奴でないということは分かっていた。なのに、勢いというものは怖くてたまりません。もう、言っちゃっ...

イヤホンが潰れる瞬間

耳につけているイヤホンから伸びた線を、無理矢理引っぱっていたら、音が聞こえなくなった。つまり潰れてしまったのだ。ちょうど私は、私が作って録音した「ダーリンタンバリン」という歌を聞いている時で、タンバリンを叩こう、とボーカルが叫び、タンバリンがたんたんとなったあとにぐいっと引っぱったものだから、潰れてしまった。まあいい。私は、潰れたのなら潰れたで別に惜しくないし、そのままにしてたら、何も聞こえないの...

橋の上のポイント

エンジンはふるふると弱々しくうなり、やがて、完全に止まってしまった。私は焦った。半端なく焦らざるを得なかった。なぜなら、その場所は橋の上だったからだ。端は長く、その町で一番長く、だから幅は比較的広かったが、それでも、二車線であり、その一方に車が動かずと待っているという意味を考えてみてごらんなさい。わたしはそれでもエンジンが止まる直前に、まずいと本能で状況の危うさを捉え、動いているうちに幅寄せをして...

こんにゃくゼリーなお危険

そもそも、こんにゃく代表とゼリー代表が話し合い話し合い、話し合いを重ねてようやく誕生したのがこんにゃくゼリーだった。ゼリーこんにゃく、とゼリー団は言うけど。つまり、妥協に妥協を重ねて導き出したものであり、重要なことは誰一人として心から納得していないということだ。こんにゃくゼリーは歳月を経て硬くなっている。さまざまな想いがそのまま硬さに現れているのだ。この硬さは危険だ。胸板も打ち抜いてしまう。かくし...

5・7・5

黒麦酒の喉越しのごとく女なり...

四葉kuro-ba

黄金に輝くその四つ葉を、太陽の葉と私は名づけて、そうしてそれをごく慎重に、まるで湯葉を引き上げるように慎重に、摘み取り私は空に翳す。青空は見えない、厚い雲が空を覆っていて、全く青は見えないけれど空に翳す。まぎれもなく4つ葉だと確認する。そうして少しだけ安心して、ポケットに突っ込んであった財布を取り出す。確か財布の中にレシートが大量にあったはず。記憶どおりある。私はそのレシートの中から、カロリーメイ...

欲望481?490(吹く吹く吹く)

・笛で和音を鳴らせる・思い出を奏でる・虹を奏でる・夢を奏でる・笛を携帯し、生活の一部に組み込む・ええ笛を手に入れて狂喜する・ひと吹きで5分・窮地に陥り、笛で犬を呼び、無事助かる・笛の吹き方を教える・笛を折る...

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