Entries

スポンサーサイト

hanazono

「春子はね、本当はTさんが好きなんだよ」と春子は言った。私はそうきたかと思いながら、とても驚いた風に目を見開く。どういうこと?と聞いてみる。「みんなは、OくんとかHくんとか男の子がすきなんでしょていうんだけど、ぜんぜん好きじゃなくて、春子が好きなのはTさんだけなの」Tさんは女の子なので、何か秘密めいている。だって、高校生の話題といえば、お洒落のこととか、好きなバンドのこととか、俳優のこととか、後は...

ノエルはオアシスを抜けて

ウェブサイトでの発表を受けて、我が家は騒然となる。しかもリアムとの確執だと発表されている。というのも我が家には、根っからの、生まれたときからオアシスファンであるという父と、その父に大いに影響を受けてオアシスファンとなった妹がいて、父はノエル派、妹はリアム派であり、その衝突は避けられない。口笛を切ったのは、最近部長に昇格し中年として脂がのりはじめた父であった。「ノエルの身にもなってみろ、オマエ、ノエ...

田辺君のこと

田辺くんは冷たい。田辺くんの私に対する振る舞いが冷たいというのではなくて、体温がとても低い。それは触ってみれば誰もがはっとするほど、はっきりと低い。体質なんだろうか、そうだとしても低すぎる。だって、田辺くんを抱きしめれば猛暑でもひんやりとしていて、過ごしやすくなる。冷たすぎることはない。私がいくらぐいぐい強く抱きしめてもいくらいくら背中をさすっても温かくはならない。その田辺くん本人は、体調は大丈夫...

もしも仮に

ミルクを飲もう、とあなたは言った。ホットミルクがいいわ、と私は言う。「いいや、アイスじゃないとミルクの味がぼやけちまうよ」いいや、あなたがそんな口調するわけがないと私はもう一度、やり直す。ミルクを飲もう、ホットミルクがいいわ、「いいやアイスやないとミルクの味がぼやけるがな」そうだ。ぞんざいだけれど何となく味があるそんな口調だった。先に進める。「ホットじゃないとおなか壊しやすいでしょ、すぐ壊してしま...

hanabi

大方通り雨だろうとたかをくくっていたけれど、待てど暮らせどやむ気配すらなくて、雨宿りをしていたジーンズショップの店員も、時々外を気にしてはため息をついている。今日は花火大会で、たぶん恋人だか友だちだかとそれを見に行く予定があって、仕事なんかやってる場合か、とはやる気持ちを必死で抑えているのだろう。雨がさらに強くなる。ジーンズショップには客がおらず、それほど広くない店内に、やはりそれほど多くない品数...

ふろ

その温泉はいかにも古めかしく、なにか必要以上に歴史を感じさせた。脱衣所で服を脱ぐ、私のほかには誰もいなくて、自然、非常にリラックスしたムードが流れている。平日の昼間だからまあそう多くは客もいまい、なんて思っていたのだけれど、全くいないとは思わなかった。これはラッキー。と私は半ばはしゃいで、うほほ、なんて小躍りで浴室の扉を開いた。とたんに、外からのせみの声、この浴室まで響いてくる。天井付近の壁に大き...

用水路に鳩100羽の死骸

隊長は何も言わなかった。何も言わずに突っ込んでいった。俺の生き様をお前ら見とけよ、と無言のうちに伝えた、と史実は伝えているが実際は、ただ、テンションが上がってふらふらと突っ込んでいってしまった、なんか楽しくなりそう、という漠然とした感覚に身を任せて、ただ本能に正直だったにすぎない。後世の人々が好意的に解釈し、それを正義の勇気ある行動とした。それを見習って続いて部隊は活発に動いた。というわけでもなく...

立ちくらみの与謝野氏

へえ、ここかい、ここが有名な立ちくらみ峠かい、なんでい、何の変哲もねえじゃねえか、おもしろくもなんともねえ。全くこれで有名だってんだからまいっちゃったね。与謝野氏は饒舌に誰にしゃべるともなくしゃべっている。淡々と与謝野氏の周りには誰もいないのにかまわずしゃべるしゃべる。しゃべることが存在する意義なんだと言わんばかりに。峠のその非常に細い道で与謝野氏の声はこだましている。無駄に張りのある良い声であっ...

産直店のみそ、クマが食う

飽きていたのだ、ハチミツの甘ったるさに。鮭のただ塩辛い生臭さに。飢えていた。違う味、違う味、と夜な夜な歩き回った。地下鉄の駅、公園の隅、そんなとこにあるはずもないのに。仕方なく持ってきた鮭をかじる。いつもの味だ。これしかないのか俺にはこれしかないのか、なんて人生だ。クマは嘆いた。嘆いてみて、そうすれば何か奇跡が起こるかもしれないと考えて嘆いてみた。まるで何も起こらない、神は我を見捨てたもう、クマは...

パパラッチの車ける

パパラッチの車は蹴ってもいいことになってるもん、と言い放った。当然でしょ?と言う目。でもパパラッチは何か有名人に対してスクープを狙っているわけで、別に天海さんの何かを狙ってるわけじゃない。だから、蹴ってはいけないと思うけど、それを口にしたら天海さんは悲しむかな。だいたいどうしてあの車がパパラッチの車だと判断したのかよくわからない。パパラッチの人は何かわめいている、私たちはぐんぐん進む、夜の街を。止...

命かけて、EXILEをやっていきます!

メンバーに残るためには様々な条件を満たさなければならない。例えば、髪型は規定の髪型から1cmでもずれれば即脱退。型があって、それのいずれかに当てはめて髪型を整えなければならない。その自由のなさは非常に窮屈で、しかも、主要メンバーと同じ髪型にすることは、きついいじめの対象になる。俺より後輩のくせしてなんやねん。と放課後に体育館裏に呼び出される。ちょっとお前つきあえやこら、と首根っこもって引きずっていか...

女優業はもう飽きた

天海さんは女優みたいだ。実際女優なのかどうかわからない。もしかしたら女優なのかもしれない。だって、天海さんはとてもきれいだから。整った顔立ちをしていて、主役クラスでテレビドラマに出演していたとしても不思議ではない。私はテレビはほぼ見ないから、天海さんがテレビに出ている人なのかどうかわからない。少なくとも、私たちが一緒に飲んでいるときに、誰かに声をかけられたことはない。オンオフをはっきり使い分けるこ...

火使わぬ部屋用打ち上げ花火

職人は涙した。なぜなら科学者が火を使わないと言い切ったから。花火に火を使わないなんて、ぼたもちにもち米を使わないようなもんだ。火の文字がその名前に入っているということはそれが前提になるわけで、それを使わないことには一歩も進めませんがな、てなもんや。涙したわけであるが、職人は悲しいわけではなかった。知っているのだ、もう、自分のスタイルは時代遅れのおんぼろだから、時代遅れのおんぼろやから。火を使わない...

ロシアの立場無視

ロシアの立つ瀬がない。まるでない。ロシアが変に言い訳するものだからみんなの機嫌を損ねたのだ。ロシアはなおも言い訳を続けている。それが逆効果であると、気づいていないようだ。言えば言うほどロシアの立場は悪くなる。悪くなるどころか、その言い訳のために窮地に追いやられるほどだ。ロシアだっていい所はあるし、それはみんな知っている。ロシアがいわば縁の下の力持ちとして陰で支えている部分がどれだけ大きいか知ってい...

生きたまま放置

ミジンコを机の上に放置してから3日が経つ。ミジンコは息絶えるどころかますます元気に机の上を泳いでいる。泳ぎながら机の上にある無数の微生物を口の中に含み、生きている。本来水の中で生活している生き物であるし、空気中で生活ができるはずがないのだ。しかし実際生活している。突然変異と言うやつかもしれない。ミジンコは口をぱくぱくとした、もうすぐ週末で、それを楽しみに生きている中年の笑顔だった。ミジンコも立ち上...

島の番人

何をしているのか定かでない。生活を送っているだけなのかもしれない。何せ情報がほとんどない。与えられるのは集に一度だけの英字新聞、実質何も読めない、なぜなら私は日本人だから、ろくに英語の勉強もしてこなかったし仕方がない。写真で何となく内容を想像して楽しむ程度だ。そのうちそんな情報にどれだけ意味があるのかと全く読まなくなった。それでなくても忙しいのだ。島にはすることがたくさんある。生き延びるために食料...

おぼれ社長

それは手を振っているように見えた。だからみんな二の足を踏んで助けにいかなかったのだ。別に社長が嫌いなのではない。断じてない、ただ、楽しそうに社長がふざけて、みんなこいよこっちはたのしいぜ、と言わんばかりのテンションで読んでいるのかと思っていたのだ。どうも様子が違い、社長が必死になっていると気づいた時はすでに初めから考えれば1時間が経過しており、社長の体力もあとわずかと言う状態であった。最後の力を振...

銀行強盗、たった9分で逮捕

その9分間に何があったのか。今となっては謎だらけだが、はっきり言えること、その結果として起こったことは、強盗は逮捕され、街にひとときの静寂と安心感がもたらされたこと。たった9分で見違えるようなすっきりとした表情だった。9分前は必死の形相で金を積めたバッグを担いていた。どこか遠くにできるだけ遠くに、とこの街からの脱出を試みていた。そして空白の9分間を経て、強盗は自らつかまるために警察署へ出向いて、あ...

最後の赤ジャージー

踊れ!と聞こえた叫び声の方を向く。その数100を越えなお増え続けている赤ジャージー。それはまだ小さな勢力であった、全人類からすれば、屁にもならん、屁の生まれる前の物体を育てている農家の遠い親戚にあたるコアラの黒い瞳が今とらえているバッタ程度のものであった。しかし赤ジャージーは全くひるむことなくむしろ喜び勇んで、存在することそれ自体がうれしくてたまらないのと言わんばかりに踊れの叫び声のまま、体を動か...

木の枝からオタマジャクシ

オタマジャクシがなるという木にもたれかかっている。天海さんを待っているのだ。木になったオタマジャクシは、地面に落ちてうごめきながら水を求め、たどり着けたら幸運な方でたいがいはひからびてしまう。たどり着いたオタマジャクシは、英雄としてたたえられ、オタマジャクシの王になる。天海さんは遅刻をしない方だけれど今日は遅刻だ。天海さんは来ない。遠くで救急車のサイレンが聞こえる。まさかと思いながら私はケータイを...

Appendix

プロフィール

なゆら06

Author:なゆら06
FC2ブログへようこそ!

月別アーカイブ

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。