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顔を近づけて、さっと息を吸う

息を吸わないと死んじゃうからね。まだ死にたくはないよ。やりたいことが山ほどある。柴漬けだって山ほど漬けたい。柴漬けを漬けるためにわたしは息を吸うんだよ。気持ちよく吸えるわけだよ。この一息は柴漬けのため、この一息は柴漬けのため、思えるんだよ。わたしの柴漬けを楽しみにしてくれる人がいる。少なくとも3人はいる。本当に楽しみにしてくれている。それは確実に言える。だからわたしは柴漬けを漬けるんだし。3人のた...

明け方、何もないところでバスを待つ

来るあてのないバスを待っていると、初老の男性に話しかけられた。さっきからずっと待っているようだけれどなにをしているんだい。いや、バスを待ってるんです。ここにバスはこないよ。そうなんですか。そうだよ、バスはバス停に来るものだろう、この道沿いにはバス停はない。ないからといって来ないとも限らないじゃないですか。いやこないよ。どうして言い切れるんですか。可能性が0ではないけれど、非常に低いと思うし、仮に来...

アイリーンの再上陸

「アイリーンがきたぞ!」「どこに?」「ほら、あそこ、軽トラの荷台に乗ってる」「きたわよ」「アイリーン?」「そうよ」「アイリーン」「なにかしら?」「キスをしてほしい」「あなたに?」「ぼくに」「それは無理ね」「どうして」「あたしには夫と子どもがいる」「かまわない」「あたしは気にするの、さあ眠りなさい」「キスしてくれたら眠る」「本当に?」「安らかに眠る」「しょうがないわね」「してくれるの?」「はい、どう...

裸になって木に登るのが好きだった

ただ木に登るだけでは満足できなくなっていた。なにかほかのやつとはちがう俺なりの魂を見せたかった。そこで服を脱いだ。意味なんてない。ただ目立ちたかった。服を脱げばなんとなくみんなこっちを見てくれるから、調子に乗った。木に登るやつは山ほどいる。掃いて捨てるほどいる。捨てるところはもうない。すでになくなっている。埋め立てる場所がない。捨てられるわけにはいかない。これがエコ。地球に優しい行為。俺はエコ。ま...

粒子がとどまること

粒子、そばにいて。今夜はずっとそばにいてほしいの。なんにもしないで。あたしのそばにいて、手を握っていてほしいの。わがままだと思ってくれていい、今夜だけでいい。粒子、あたしはあなたとの思い出のなかで生きていくわ。楽しいだけじゃない、悲しいものも含まれている。それでもいいの。全部あわあせて粒子よ。照れ笑いする粒子、子犬と戯れる粒子、合格発表を見に行く粒子、寿司を握る粒子、粒子の吹いたサックス、サックス...

親分肌でスピード

「親分!」「なんだ、そんなおっきい声だすんじゃねえ」「スピードが再結成しました」「あのかつての沖縄の小学生か?」「そのスピードです」「そらめでたい」「でしょ」「よし、祝い酒だ」「まま、いっぱいどうぞ」「じゅんびがいいじゃねえか」「親分のことは何でも知ってますよ」「は、俺はよい子分を持ったものだ」「さ、このカルビーの商品が酒に合います」「カルビーだ?」「ええ、カルビーです」「俺がそんなもの食えるか、...

ひげづらの兵士らが花を

花を高く掲げると、遠くからでも見えるように大きく振った。自分はここにいるんだよ、まだ存在しているんだよ、はなくやってきてくれよ、仲間だろう?花は赤や黄色や紫や、どうしてこんなにも鮮やかなんだろうと思うけれど、鮮やかなんだから仕方ない。こんなにも困っているって言うのに、腹をすかせているって言うのに、無常だ。世の中は無常さ。花が鮮やかなほど、自分が惨めに思える。それもこれも終わりよければ全て良し。全て...

髪まとめると顔ちっちゃいな

ちいさすぎておじさん、なくなったのかと思っちゃったよ。そんなわけあるめえ、そんなわけあるめえ。顔がなくなったら風景が見れなくなるからね。いつ忍者が四方から手裏剣を投げてくるかわからないから、風景を見なくちゃあならねえ。手裏剣は危険だよ。見ずにキャッチできるやつなんかオラ知らねえ。一人しか知らねえ。伝説の男よ。顔も見たことねえ、名前も知らねえ、なんにも知らねえ。ただそういうことができたってことだけは...

吐いたら負けかなって思ってる

吐いたらそれで終わると思う。まず管理能力が問われる。自己管理能力。なんでこいつこんなところで吐くわけ、という視線が突き刺さると思う。準備がなっとらん、ということになってしまう。そんなことにはさせない。だから吐くわけにはいかない。わたしなら我慢することができる。我慢して飲み込み、胃におさめることができる。数時間保管したあと、一気に流しだせる自信がある。...

かなしみを手のひらの上で転がせば、文明開化の音がする

しゃんしゃんと鳴った。これがかなしみなのかとぼくは思った。ひとつ、指を立ててしいっと囁いた。この音をぼくはじっくりとちゃんと聞きたいから。彼女はぼくの隣で眠っている。完全に、かすかな寝息を立てて眠っている。彼女が目を覚ますことはない。あと数時間、彼女はひどくつかれている。しゃんしゃんと鳴った。どうしてしゃんしゃんなんだろうか、とぼくは考えてみたけれど、答えなんて全然思いつかない。かなしみの音がしゃ...

欲しいなと思っているのに買ってないもの

「シュークリーム」「買えばいいじゃないですか」「買えません」「なんでですか?」「だってシュークリームですよ」「あのシュークリームですよね?」「なんかやわらかい生地に」「そうそう」「カスタードクリームが包まれてて」「ホイップクリームの場合もありますよね」「すっごく酸っぱいの」「いや酸っぱくはありません、すごく甘いです」「戦場では武器として使用されるし」「されません」「突然の高熱には額に置いて使用し」...

一目惚れした彼に、イチゴアイスを思い切り投げつける

愛情の裏返しって理由をつけてみれば少し落ち着く。イチゴアイスは彼の額にびちっと命中し、そこに留まるかどうか迷ったあげくに地面にまっさかさま。どうしてあたしは投げつけてしまったのだろうか。今はすごく後悔している。だって一目惚れしたのに、そんなことってある?実際あるんでしょうか一目惚れ、聞いたことがない。一目惚れって100%見た目で判断してるってことでしょうよ。好みの顔って言うことなんだと思うけれど。あ...

知らない人に食パンをもらう

目覚めると海があった。知らない。わたしがどうして海のそばにいるのか全く記憶がない。何も思い出せない。落ち着け、とわたしは自分に言い聞かせようとする。自分に。自分、名前は、知らない。思い出せない。自分の名前も思い出せないということは俗に言うあれだろうか。あれだ。なんという名前だったか、それも忘れた。よく言うじゃないか、よくドラマになっているじゃないか。記憶がなくなる症状だ。一時的な症状だ。なにかのき...

ゴルバチョフのクーデター

先頭に立ってみたが、なにをしていいのかわからない。後ろからどんどん進んでくるものだから自然に前に進んでいる。端からは率いているように見えるだろう。まったく率いてない、どころかどこに向っているのか、目的が何なのかすら知らない。ぼくは暇だった。退屈しのぎが何か欲しかった。ちょうどいいタイミングで団体がやってきた。なにか威勢が良くて、どこかに向っている。時間はつぶせそうだ。あれだけ運動したらお腹もすきそ...

水色のワルツ

ワルツは鳴りだす。ひとりでに、空から降ってくるように。ぼくはそのリズムを正確にとらえて踊るだけだ。なりふりかまっていられない、このワルツを逃してしまえば次にいつくるかわからない。ぼくは上手く踊れているだろうか、ぼくが踊っていることに気づいてくれるだろうか。万が一の可能性にかけてみたいんだ。今踊らなきゃいつ踊るんだ、とトリオは言うだろう。このワルツを鳴らしているトリオだ。ぼくはそのリズムに身を任せて...

缶の中に人の足

缶の中にあったんではなくて、入ったんだ。結果的にはあったということだけど、自分の意志で入ったんだ。入って待ってたんだ。時代が変わるのをじっと待ってたんだ。日本の夜明けを待ってたんじゃい。これからの時代は侍じゃなか、政治家じゃい。政治家になって筆で剣を制覇するんじゃい。自分にはそれができると思う。おばあちゃんにいつもそのように言われていたから。おばあちゃんは自分のことをすごく褒めてくれた。どんなこと...

コツコツとノックする

「一度では足りないんです」「あんまりやりすぎるのも失礼になるんじゃ」「誰がそういったのですか?ノックはね、小さなことからコツコツと」「ほどほどってことでしょ?」「いいや、コツコツと継続してやりましょうね」「継続して?」「そうです、そうでないともぎとられますよ」「なにを?」「右腕を」「恐!」「ぼやぼやしてると、右は左足です」「なんでデンジャラス」「だから常にノックしておくこと」「その主、ノックの音に...

宇宙の終焉はいずれやってくる

わたしはねえ、ここでね、この海の家でね、それを待っているわけなんですよ。絶対にやってきますからね。わたしは確信を持っていますからね。知ってるんですよ、終焉が来るということをね、知っているから何もかも捨てましたよ。見事に捨てましたよ。全く何も残っていません。終焉が来るだけですからね。簡単な話ですよ。捨てるだけ、楽だった。何とも言えないあの気持ちよさでしたよ。捨てるのはね。まあ、もうすぐ来るんでしょう...

魂を売る話

「いらんかねー、たましいはいらんかねー」「もしもし」「いらっしゃい!魂いりますか?」「魂、くれるの?」「もちろんタダではありません」「いくらなの?」「魂にもよりますが」「たくさんあるんだ?」「ありますよ」「どんなのがあるの?」「レモンの味がするのやら、いちごの味がするのやら、メロンの味のするのやら」「食べる用?」「観賞用もありますし」「そもそも食べれんの?」「ええ、夏なんかには人気ありますね」「夏...

僕が僕であるために路上で下半身を露出します

仕事が忙しいんで疲れている。震災の後片付けは終わらない。未だに全く終わらない。それにみんな気づいていない。忘れていく。だんだん忘れてしまう。だって日常はこんなにも平穏に流れていくし、彼女はいつにまして可愛いし、炊きたてのご飯は塩だけで十分なほどおいしいし。僕は忘れてはいけないと思う。まだ叫んでいる人がいる。心の叫びだ。それを僕は聞き逃さないように、できるだけそばで聞いていたいと思う。僕にできること...

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