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私が半分人間の女性、半分機械というイメージで表現していて

あなたは私の半分を愛したのよ。あくまでも半分。私の女性の部分を愛したにすぎない。私の機械の部分をあなたは知らない。というか誰も知らない。私は機械の部分を誰にも見せたことがないの。両親にだって見せたことがない。私の半分が機械になったのは、ちょうど5年前の夏のことです。私は工場で働いていた。缶詰を造る工場よ。なんの缶詰なのか、私は知らない。なんかの缶詰の或る部分を組み立てる作業をしてただけ。匂いも形も...

悪の化身/すぎやまこういち 7

直人は悪だが、悪でも悪なりに気を遣っているところがあって、それがたまらない。なんというかそれ故にあたしは直人に対して強く出る事ができない。うまくできている。あたしがなんと言おうが、結局、あたしは直人が好きなのだし、惚れているのだし、その点になんら曇りはないわけだから、あたしは堂々と胸を張って生きていこうと思っている。直人はいつかあたしのもとから離れてしまうだろう。直人のことを見ているとわかる、あた...

悪の化身/すぎやまこういち 6

直人が好きなアニメのはなしをしよう。彼が好きなアニメは悪があって、なんというか絶対的な悪、それがでーんと存在している世界にあって、いかにして隙間を狙って生きていくか、がメインテーマとしてある。正義のヒーローは複数いる。複数が時に手を取り合って、反発がありながら、それでもなんとか絶対悪に立ち向かっていく。その様は滑稽でしかない。みんな不器用すぎる。もっといいやり方があるだろうに。とあたしは思うけれど...

悪の化身/すぎやまこういち 5

直人は無口で、あまり動かない。自然、あたしが中心に直人の世話をすることになる。直人はぼんやりとしている。けれど、出て行かないところを見ると、あたしのことを気に入っているらしい。そう思いたい。思わないとやってられない。なにせ、家政婦以上の働きをしている。母親としての働きをしている。直人の家族の方は一体どんな苦労をしたのだろう。どうやったらこんなふうに育つのだろう。疑問を感じたが、別に追求しようとも思...

悪の化身/すぎやまこういち 4

あたしは学習した。あたしは考える葦だ。つまり学習する。有頂天の怖さを学んだ。切なさを学んだ。金輪際、あたしは有頂天にならないと誓った。天に誓った。教室だったので天井があり、天は見えなかった。しかしあたしにはちゃんと見えていた。その天に誓った。天はうんうんとうなづいてくれた。天は優しいのだ。あたしは天の優しさに抱かれている。抱かれたまま、涙を流した。先生は何も言わなくなった。みんな静かになった。教室...

悪の化身/すぎやまこういち 3

学校で、あたしはシールをそっと取り出し、ちらっと見て、またポッケにしまった。何度も何度もあたしはそれを繰り返した。うふふと笑った。シールは取り出すたびにきらきらと輝いた。あたしは有頂天だった。そうか有頂天というのはこう言う状態の事を示すのだな、とあたしは思った。有頂天というのも別に悪くないなと思った。有頂天という言葉にあたしは取り憑かれていたのだ。4時間目、シールが先生に見つかった。先生は怒鳴り上...

悪の化身/すぎやまこういち 2

有頂天になりかけたあたしは可愛かった。自分で言うのもなんだけれど、可愛い、とけっこう言われた。誰彼かまわずに可愛いと言いよられた。そんなこと、今までなかったから、あたしはますます有頂天になりかけた。絶対に有頂天にならない、とあたしは自分に言い聞かせた。あたしなんかが有頂天になってはいけない。あたしが有頂天になったらろくなことがない。ろくなことがない。あたしは小学4年のときに有頂天になった。きっかけ...

悪の化身/すぎやまこういち

直人は悪だ。悪そのもの=直人だと言える。あたしは言い切ってしまう。直人が通りを歩けば、悪のメロディが流れる。それはとても綺麗だけど、通り過ぎたあとに心臓を引き裂かれている。悪の匂いが漂ってくる。誘われている子は悪の手先になりかけている。保護者はしっかり手を握って、自宅に駆け込むべき。直人が悪だということは十二分にわかっている。けれど、あたしは直人についていってしまう。どうしてだろう。あたしは大学に...

虎/ハンバートハンバート 8

で、俺は都会を出た。急に何?私は思った。口には出さなかったけれど、飼育員とのラビリンスが今からはじまるのかと思っていたところだったから、急に都会を出てしまった。だったらもっと端折ってやってほしかったし、もっとまとめることができるでしょうに、それをしかかったのなんで?と思った。口には出さなかったけれど。虎はかまわずに話し続ける。気づいたら俺は竹林で眠っていた。竹林は意外と快適だった。一度眠ってみると...

虎/ハンバートハンバート 7

俺と飼育員の共同生活が始まった。俺は嬉しかったよ。生きる目的がここにはあるような気がした。今までの俺はなんだったんだ、会社と壺の日常、女房子どももそこそこに、俺は惰性で回っていたんだ。飼育員は俺に餌をくれた。俺が欲しがるだけ食べさせてくれた。栄養バランスも考えて、偏らないように作ってくれた。うれしかった。おいしかった。これだけあれば他に何もいらないと思った。というか、東京からでても、なにがあるとい...

虎/ハンバートハンバート 6

その吠えた声はラーメン屋の天井を突き抜け、空へ、届いたであろう。駆けつけた警察、特殊部隊に俺は羽交い締めにされ、檻に入れられていたよ。檻は鉄でできていて、俺の力ではびくともしなかった。俺は抵抗する事もなく、檻に入れられた。なんというか、もう気持ちがなえてしまったわけだ。何もする気が起こらない。すべてむなしい。損な境地になっていた。どうにでもなれ、とホンキで思っていた。何日か、俺は檻の中で過ごした。...

虎/ハンバートハンバート 5

俺は必死になった。東京を出たい。出なければならない。飼育員を探した。上野動物園に行けばそこに楽園がある、と虎の仲間に聞いた。虎に仲間はすぐに見つかった。なんせインターネット全盛の時代。検索すればすぐにヒントを得られる。呼びかければ同じ虎どうし、アドバイスをくれる。虎だけど、飼育員いない?と掲示板で聞いてみた。すぐにレスポンスがあり、飼育員だけど聞きたいことある?と返してくれた。俺は虎を東京から逃が...

虎/ハンバートハンバート 4

東京は思っている以上に都会だよ。知っているだろうが、都会ってことなんだ。都会では虎は一人で生きていけない。つまりそういうことだ。虎は飼育員の力を借りないといけない。飼育員は虎にとって神様みたいなもんだ。脱出するにも飼育員の力を借りないといけない。虎は焦ったよ。東京で飼育員なんて何人いるんだろう。動物園も数えるほどしか知っていない、というか上野動物園しか知らない。虎がひとりで上野動物園に行って、専属...

虎/ハンバートハンバート 3

よくあることだとみんな思ってたよ。でもその顧客はちがったんだ。なにがちがったか。それはね、怒鳴り込んできたが、すぐにおとなしくなった。そして笑い出したんだ。なんかもうおかしくてたまらないという風に笑い声でね、どうしてそんな風に笑えるんだろう、どうしてお金をとられて笑っていられるんだろう、と俺は思ったよ。そしたら、急に怖くなった。このままずっと壺を売りつづけて、俺は生きていくのだろうか。俺はなんのた...

虎/ハンバートハンバート 2

すると虎はおどおどと話しはじめた。久しぶりだな親友、今は虎になってしまったが、俺はこの姿になる前、君のよく知っている西田だ。え?西田ってあの、けっこう出世して、なんかよくわからんうちにどっかへ消えた西田?話しかけないでくれ、今、俺がしゃべってる途中だから、とりあえず話を聞いてほしい。聞いてくれたらそれでいいから。なにをしてほしいわけでもないから、とにかく聞いてほしい。今でも西田やったら、奥さん子ど...

虎/ハンバートハンバート

なんとしても届けなければならない手紙があって、山の中を急いでいた。途中で、この山は虎が出るから危ないよ、と言われたがかまっていられない。虎に出会う確率と、届けなければならない手紙の価値と比較して急ぐことにした。従者は嫌な顔をした。そんな危険なことはする必要ないんだ。おいら、そんな金もらってないからね、手当をもらわなくっちゃやってられないね、という顔をした。あとで手当ははずむつもりだ、という旨を伝え...

予想/星野源

予想よりも速く追いかけてきた。ずいぶん速い。このままでは追いつかれてしまう。追いつかれたら最後、あたしは喰われてしまうだろう。丸呑みにされてしまう。いくらあたしはあんまり脂肪分もないし、小骨がたくさんあって食べにくいですよ、と言ったところで聞いてくれない。鬼婆は食いしん坊だから。いったんとらえた餌をみすみす見逃すわけがないじゃない。鬼婆のあのよだれ、口の中にまるでみずうみのようにたまっている。右手...

雑踏/サカナクション

雑踏に足を踏み入れる、誰もが急いで歩いているような12月。町はイルミネーションできらきらしてる。冷たい風が額に当たる。立っている男女は甘いことを語らっている。「もう、ネズミ色の服を着ないでくれるか?」「どうして」「地味だからだ」「あたしはネズミ色が好きなのに」「たのむ、一生のお願いだ」「無理」「どうしてもだめか?」「無理無理無理無理」「わかった」「ごめんなさい」「わかれよう」「そんな」「それしか道...

地球のへそ/ズットズレテルズ

「地球のへそを知ってるか?」「聞いたことはあります」「どんなこと?」「地球のへそはくさい」「くさい?」「それはそれはくさく、誰も近づかないという」「はあ」「そのにおいを嗅いだものは」「嗅いだものは」「3日後に死ぬ」「死ぬんや、3日後に」「地球のへその匂いはまるでネズミの死骸」「なんか規模、ちっちゃ」「ネズミの死骸で壁を作った家の中にいるような気分」「嗅いだら死ぬんでしょ?なんで知ってるの?」「嗅い...

スマトラ警備隊/相対性理論

警備隊が横切った。町を横切っていく警備隊は一様に硬い表情をしている。なにかおこったのだろう。私は警備隊が行く先に目線をやった。ゴジラだった。はるかかなたにいるはずなのに、これほどまでに巨大な動物がこの世に存在するなんて。私は腰を抜かしてしまった。これでは動けない。もしもゴジラがこちらにやってきても私は逃げることができない。警備隊の潜在能力にかけるしかなかった。非常時に備えて訓練しているはずだった。...

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