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指の傷/岸田繁

その傷を、見せてくださいますか?ええ見せてもらうだけでいいです。それで満足ですから、見せてくださいますか?はい、ちょっとこちらに来てください。申し訳ありませんね、足を悪くしてしまって歩くことができませんので、移動することはできますよ。このキャタピラーで移動できますから、ただ、小回りが利かない。困ったことです。どうしてキャタピラーを選択してしまったんだろうって、いつも後悔しています。ちょっとかっこよ...

夜道のひとり歩き/モノポリーズ

夜道の一人歩きには気をつけて。乙女であれば特に気をつけて、でなければ瞬く間にさらわれてしまう。ひとさらいはそこいらじゅうにいるんだから、人を見たら人さらいだと思っても支障ないし。人さらいは怖いのよ。人洗いよりも怖いのよ。人洗いは人をさらっておいて洗ってくれる、洗ってくれて送ってくれる。もとの場所に送ってくれる。飴ちゃんもくれる、人洗いがくれる飴ちゃんはハッカ味でとてもまずいから嫌いだ。ハッカ味の飴...

とぎすまそう 2/Lantern Parade

とぎすまそう、映画館、静かなシーンを見ているとき。かすかにスナック菓子を食べる音、つばを飲み込む音、足を動かす音、髪をかきあげる音、えー3年B組ー!金八先生ー!わー!かなしい静けさ、土手の上。わからない、わからないわあたしあなたの気持ちが。わからないのは当然さ、ぼくだってわからないのだからね。嫌な人。嫌な人に惚れたのは誰さ?わかってる。悔しいです。悔しいので私は散弾銃をぶっ放します。ぶっ放してタヌ...

共鳴(空虚な石)/Lily Chou Chou

鳴り響いているので、ボタンを押した。そう指示されていたから躊躇することはない。鳴り響いている間ずっとこのボタンを押しつづけていてください。そうすることによって聴力を検査するんです。え?なんのための検査だって?それはもちろん、日常生活を送る上で支障のでない程度の聴力を持っているかを知るためです。もしも持っていないとしたらたいへんです、ただちに補聴器をつけてもらうことになります。最近の補聴器は性能がい...

ミルク・ティー/遠藤賢司

ミルクティーをひとくち、あたしはゆっくりと飲み込む。楽しい瞬間。少しずつ、喉から奥へ奥へと入っていくミルクティーが、今や遅しとまだ口の中にいるミルクティーに対して持った優越感を、あたしは感じる。ザッツ・ミルクティーの憂鬱、ミルクティー業界の浮き沈み。アルフォートをひとくち、以下同文。ミルクテォーをひとくち、アルフォートをひとくち、同時に口にいれてしまう、あたしは強欲な女、ふたつが混ざりあって見事、...

ブラジルの神/CRAZY KEN BAND

神はいたんだ、たしかにわたしは見たのだ。神はたいへん柔和な表情で、すべてを悟りきったような表情で、それは幸福を絵に描いたような表情で親子丼を食べていた。なか卯での出来事だ。神は親子丼が好物なのだろう。わたしが見る時、神はいつも親子丼を食べている。なか卯での出来事だ。神はまず、親子丼の卵の部分を必死でかき込む。がつがつと言うほどはげしくかき込み、時々むせるほどだ。お客さん、おちついて食べてはどうです...

余談/チャットモンチー

ということで、よろしいでしょうか。来週早々にも見積もりを提出しますので、ぜひご検討いただきたいと思います。もちろん、概算での見積もりですので、ご相談いただければと思います。カラーバリエーションなど様々ありますので、カラログをお持ち帰りください。ここに掲載していない分で言いますと、当社のホームページにあります。はい、それで、余談ですが、今キャンペーン中でして、私とじゃんけんをして、お客様が勝った場合...

甘い湯気/モノポリーズ

甘い湯気が部屋に充満している。それはふたりが愛し合ったあと、寝息を立てた君を覆っているうすいシーツ。寒くないの?全然。むしろ熱いぐらい。どういう意味?燃えてるからね。いやん。といってさらなる甘い湯気を充満させるのです。二重に充満させたあとは、シャワーを浴びる。シャワーの刺激は心地よい。肌が生き返るような気がする。むくむくむく、起き上がった肌、君はふたたび抱きついてくるだろう。今宵はそういう気分だベ...

マリちゃんを探せ/岸田繁

マリたんがいなくなった。たいへんだ、いなくなったってことは怒られる可能性がある。とうさんに怒られる可能性がある。というか確実に怒られてしまう。ぼくが悪いわけじゃないのに、確実に怒られるなんて、なんとなく割にあわない。マリたんは確かに可愛いし、少々の困難なら別に気にしないけれど、とおさんに怒られるのはごめんだ。少しごめんだ。できたら避けたい、怒られることによってぼくは致命傷を負う。立ち上がれなくなる...

僕が白人だったら/andymori

「僕が白人だったら、もう少し背が高かっただろう、なぜなら白人はたいてい背が高いからね」とケビンは言った。つまりケビンは白人ではない。背が高くない。列のまんなかほどで、目立っていない。ケビンというぐらいだから、さぞかし鼻が高く、目元のほりが深く、髪はくりんくりんで、目が青い。可愛らしい白人をイメージしていたのはクラスの大半だった。入ってきたその人はイメージとはかけ離れていた。離れすぎていた。ちゅうか...

でっかい太陽/曽我部恵一BAND

でっかい太陽だった。かなりでかいよ、と圭祐は言った。つぶやくように言ったから、独り言かもしれない。圭祐は時々、独り言を言って、自分でうなづく。自分でうなづいたらそれは独り言だと言う証拠だよ、と言っていた。今、圭祐はうなづかなかったから、わたしにいったのだろう。でかいね、とわたしは答えた。は?と圭祐は聞いてくる。だから、太陽、でかいよ、って言ったでしょ?言ってねえよ。じゃあさっきでかいって言ったのは...

二人のシルエット/サヨナラCOLOR~映画のためのうたと音楽~

シルエットって残酷。あたしは待っていたわけ。正志の部屋の下、もしくは真冬の夜の下。つむじ風が吹きすさび、あたしのマフラーはすごくなびいていた。カーテンがかかった部屋が見えている。すごくはっきりとシルエット。これは正志、正志がうろうろしている、物を振り上げている。振っている。マラカスからしら。歌っているのかしら。ギターは弾けないはず。正志はギターを弾けない。窓辺にいるのかしら。シルエットはすごく大き...

殺すな/SAKEROCK

殺すな。殺さずにとらえよ、刺客は死などによりその身体を停止させてはならぬ。そんなことではわしの怒りは収まらぬ、決しておさまらずむらむらと燃え上がるだけだ。いったんとらえ、そして考えよう。みなで考えればよい。もっとも残酷で、もっとも苦痛を伴い、もっとも派手な目にあわせてやるのだ。それを経験したあとに、落語化して、よに語り継ぐ。古典となった落語は、ええ、そんな昔のはなしなのに、なにか新しい、と言わしめ...

サガラミドリさん/ホフディラン

ミドリさんはこう言った。少年よ、大志を抱け、素晴らしい言葉だと思う。少年に対する呼びかけ、少女を入れない事が素晴らしい。少女を入れてしまうと、抱く大志も幅広くなる。少年ならば限定されている。3つに限定される。ひとつはプロ野球選手になる事。もうひとつはパイロットになる事。最後にウルトラマンになる事。この3つが、少年の抱くべき、大志だ。少年であればどれかを抱く。それ以外には抱く事がないようになっている...

真夏の条件/Base Ball Bear

「真夏の条件を知っているかい?」と男は話しかけてきた。男と話すためにここにきているわけではなかった俺は、無視しようとした。しかし男はしつこく話しかけてきたわけだ。「真夏の条件を知っていないと苦労するぜ」男は分厚いメガネをかけており、底にある瞳はひどくにごっていた。あるいは、男の目は見えていないのかもしれない。メガネは薄く色が入っていた。定まらない視点がうろうろと空を彷徨っていた。俺は無視し続けるだ...

泣き虫/Lost In Time

泣き虫を見た。あたしは泣き虫を温水プールの更衣室で見た。水着からジャージに着替えているときに泣き虫はあたしのうしろに立っていた。泣き虫は泣いていなかった。泣いているから泣き虫なんじゃないよ、と泣き虫は言った。いつでも泣いていると思ってたのかい?ええ?思ってたんだろう?と泣き虫はたいへん高圧的だった。それだけであたしは辟易した。今にもあたしの胸ぐらをつかみかかってくるような勢いだった。あたしは急いで...

バスを待っている僕ら/メレンゲ

待てど暮らせどバスは来ない。かれこれ3年が経つ。ここはバス停ではなかったのか、と最近思うようになった。だとしたらあきらめて帰宅するべきだと思う。帰宅すれば暖かい風呂に入る事ができるし、おいしいご飯を食べる事もできる。快適な空間で、読書しながら珈琲牛乳を飲み、ふわふわの布団で眠る事もできる。なんて快適な生活なんだろう、気づかなかった自分が腹立たしい。何かにつけて不満に思っていた自分が恨めしい。あの時...

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なゆら06

Author:なゆら06
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