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恋をしたのだ。電気が走ったように背中がしゃんと伸びた。夏だった。夏になりかけて、まだ夏になりきれない曖昧な時期だった。夏だってまだ本領を発揮していないので、私は遠慮がちに日傘をさした。日傘は唐草模様でお気に入りのものだった。その日傘いいね、と君が言ったから、7月8日は日傘記念日なんていう甘っちょろいことを囁いたりした。夏のせいだ。私の気持ちをもてあそぶ、ために存在するような入道雲を尻目に、私は走っ...

虎退治

虎が町で暴れている。かなり凶暴な虎で、若い娘さんなどたちどころに食ってしまう。貴金属はのちに吐き出し、熟れそうなものはポシェットに入れている。どうにかして虎を捕まえないといけない。このままでは村人は虎に食い尽くされてしまう。先祖代々続いてきた村が、一匹の虎によってなくなるのは忍びない。そういって虎退治に青年団が乗り出した。青年団と言っても平均年齢60のおっさん集団である。青年団は虎の暴挙が許せなか...

光と影/ハナレグミ

光が半歩下がると、影は手を挙げてタクシーを止める光が乗り込むと、影は1万円を差し出して運転手の肩を叩く光は水族館に着き、走って追いついた影とともに泳ぐ魚を見る光は蟹を見る、影はピラニアを見る光はため息をつく、影もため息をつく...

アインシュタインは正しかった

アインシュタインが正しいかどうかなんてね、どうでもいいことだ。あんな半生記以上前に死んだ偉人の言葉が正しくなかったとしても誰も困らない。そんなことより現代を生きろよ。真剣に生ききろよ。真剣さが必要なんだよお前には。いつからそんなにぬるくなっちまったんだよ。あたしはかなしいよ。お前はもっとできる子だった。もっと危機感をもってのぞめよ。なにごとも大切に。生きるんだよ。あたしの夢はね、お前が一人前になっ...

沈みゆく会社から なぜエンジニアは逃げ出さないのか?

沈んでいる。会社はずぶずぶと音を立てて地面に沈んでいく。あと数時間もすれば完全に沈んでしまうだろう。みんな逃げ出した。命が大切だから、仕事を投げ出した。当然だ。誰もとがめられないだろう。会社は沈んでしまう、共に沈むことはない。沈む意味はない。けれどエンジニアは逃げ出さなかった。彼はいつまでもデスクに向かったままだった。誰もが声をかけた、さあはやく、ここから逃げ出しましょう。会社にいる必要はありませ...

男の子はガンダムと性欲でできている

北村くんはあたしの唇を吸う。激しくて、目を閉じて、必死に口をとじようとするけれど、舌はさらに侵入してくる。あたしの歯の裏側までしっかりと舐めとるようなつもりなのかもしれない。のぞむところだ、とあたしも舌をからませてあげる。これだけでいいのなら、簡単なことだ。あたしは北村くんを受け入れ、通り過ぎていけばいい。あたしなど所詮は通り過ぎるだけの女、それでもいいのだ。妖艶にふるまい、北村くんを誘惑すること...

ひらめきの月曜日

休息の日曜日が終われば再びたちあがる。ひらめきの月曜日だ。俺はひらめく。どんなことだろうと、俺の前に課題を山積みにしろ、世界の問題をすべて並べておけ。そうすれば俺がひらめき、解決してやろう。俺はひらめくぞ。さあこい、難しいほどに燃えてくるだろうよ、そういう男だ俺は。知っていたか?俺のことどれぐらい知っているんだ。さあひらめこう、まず俺の前にある課題はなんだ?なになに、宗教の問題か、オーケー、よくあ...

重い扉

扉は開くためにあらず。閉じつづけていることで役割を全うする扉がある。そう教えてくれた西宮さんが死んだのは5日前。身寄りもなく、路上で生活している西宮さんは市の担当者と名乗る男に引きずられて海に捨てられた。最初、西宮さんは浮かんだままだったので、担当者は舌打ちをし、部下であるらしい若い男に重いものを持ってくるように指示した。若い男は阿呆だったらしく、彼が持ってきたものはカーネルサンダースの作り物だっ...

リビングルームに革命を

簡単なことです、まとこに簡単なことでするからすぐにでも実践してください。それだけで、劇的に変わります。目に見えるように変わっていくでしょう。リビングルームに必要なものはなんですか?え?TV、薄型の大きいやつ?そんなものはね、必要ないんですよ、実はね。ぜんぜん必要ありません。むしろラジオを置きなさい。大型の厚型のやつをおきなさい。そうすると必然的にそれを聞くわけでしょう。毎日、毎日ラジオを聞く生活をし...

ティアラ、噛み付く

ティアラが噛み付いてくる。なんという獰猛さだろうか。あたしはこんなに獰猛なティアラなら拾わなかったのに、とすでに後悔しはじめている。ティアラは尖っている部分であたしの皮膚を噛みちぎろうとしてくる。血が噴き出す。なんて鋭い牙だろうか。この牙はあたしの皮膚をちぎるためのものか、あたしは戦慄した。落ちているわけないと思った。だいたいティアラが落ちているなんて怪しい。完全に怪しい。通常であればそんなもの無...

ドースル?/奥田民生

民生さんです。まあ間違いない。どうやって歌ったってカッコいいのだから。なんであんなにカッコつけてなさそうなのにカッコいいのでしょう。それはね、と妖精は教えてくれます。妖精はわたしの背中に住んでいて、わたしがなにか疑問を持つとむくむくと起き上がり、わたしに答えを教えてくれます。ただし、その答えが合っているかどうかは疑問です。むしろ間違っている場合が多いようです。というのも、所詮妖精なんてわたしの創り...

楕円(だえん)球を追う。

楕円球は意外な方向へ弾む。ゆり子はがむしゃらに走り、つかもうとする。けれど思うようにはいきません。ゆり子がいくら手を伸ばそうとも、楕円球はその先にあらよっと駆けていく。意志を持っているのではないかと勘ぐってしまう。当然、あの小さな楕円の中に複雑な脳回路が組み込まれていることはない。ただの空洞だ。空気が外の皮をぐいっと押している。ラガーマンが力のかぎりに空気を入れたわけだ。だからよく弾む。ゆり子は舌...

反応したのはワオキツネザルだけだった

ワオキツネザルは違った。彼女はそれを見上げ、ほほう、と鳴いたのだ。ほほうほほう。そんな鳴き声ははじめてきいた、と飼育員は言う。つまり意識している、彼女だけが意識している。みるみるうちに彼女の目が燃えだした。めらめらと燃えてもなお、ほほうほほうと鳴いている。踊りだした。やはりはじめて見た、と飼育員は心配そうだ。飼育員にとってワオキツネザルの体調管理がすべてだ。他にも色々あるが一番重要なのはそこだ。明...

踏まないクモ

踏むクモ、踏まないクモの違いを教えましょう。まず、踏むクモですが、これはもう見た目ですよね。嫌悪感が生じたらすぐ踏む。さささとわき起こった嫌悪感を封じ込めずにすぐに解放させること。解放させてすぐに踏むわけです。遠慮なんかしてはいけませんよ。クモに失礼です。クモのためにも思い切り踏んでしまいなさい。踏むクモは踏むために生まれてきたのです。厳密に言えば踏むために生まれてくるわけがありません。けれど損な...

Imagine?/BEAT CRUSADERS

ビートクルセイダーズのインディーズ時代のセクスキューとよりイマジンです。この曲は人気があるらしく、メジャーでもセルフカバー(というのかな?)してましたよね。軽快なアコギがたいへん陽気に響きます。だんだん音が重なってきたらもうはじまっていて、歌がシンプルな王道メロディがずどんと繰り返される。このわかりやすさが人々の心をとらえたのでしょうね。なんといってもビークルはお面をかぶっている、覆面バンドなので...

エピソード/星野源

星野源さん、モテモテです。すっかり名声を手に入れました、もう揺るがないでしょう。いったんこの地位に立ったなら一生大丈夫、少々無茶しても全然問題ありません。だからストロベリーパフェとチョコレートパフェを同時に頼みます。交互に舐めるのです。星野さんは甘党です。交互に舐めながら右ポッケに入っている甘納豆をつまみます。左ポッケには柿の種が入っていまして、これがアクセントになるわけです。同じ味ばかりでは飽き...

満足そうなマドン

マドンが満足そうなのは娘が話しかけてくれたからだ。朝、目覚めて雑誌女性自身を読みながら珈琲を飲む。マドンのささやかな楽しみだ。やがて娘が起きてくる。もう19にもなれば立派な大人だ。少々遅い反抗期のまっただ中にあり、娘はマドンと口をきかない。目が合えば舌打ちをする。別に何か気に障るようなことはしていないので、一時的なものだと割り切っている。けれどやはり年頃の娘に舌打ちされるのはあまりいい気分ではない...

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なゆら06

Author:なゆら06
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