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搾取される乙女

いけませんいけません、わたしからもうもぎとるものはありませんありません。箸が転げても笑う年頃のわたしから、あなたはなんにももぎとろうとするが、わたしだってわかっている。それはずるい大人のやり方で、わたしはだまされているだけだって。わかっているけれどやめられない。やめられないとまらない。とめようものならあなたの顔が夢にまで出てきて言うのでしょう。俺の虜になっちゃいな、ふたりで旅に出かけよう、うまい魚...

昔々、団子作りの好きな婆がいた

婆は団子作りに情熱を燃やした。団子作りだけが取り柄だった。婆のことなど誰も見ていないが、婆が作る団子は皆、有り難がった。崇め立て、天皇への献上品として提供された。婆は請われるままに団子を作った。腕が痛くなった。腰は曲がった。体のことなど二の次だ、より良い団子を作りたかった。作って次の団子を作って、より質の高い団子を生み出した。職人として高みへ向かっている。そんなころ、取材班は婆に密着した。ストイッ...

親愛なるチョコレート氏の欲望

チョコレート氏の右ポッケには夢がある。もちろん左のポッケにはチューインガムがあるわけではない。チューインガムをポッケに入れると厄介だ。夏場ならべたべたになる。冬場だってけっこうべたべたになる。だからチューインガムをポッケに入れてはいけない。入れずに食べる、これが基本だ。ところでチョコレート氏の夢とは、ミルクチョコレートになることだ。あの白く、優しい微笑みで乙女をごまかしてしまうミルクチョコレートに...

雨の日の美術館

まだ、あかりがともっている。深夜、なのに。美術館は静かで、屋根を撃つ雨の音は、ここには届かない。霧に近い雨で、いっそのこと、降らないでもいいのに。あかりの下にいるのは若い女、少し離れて中年男、ふたりは何も話さないが深い絆で結ばれている。男女の仲というわけではない。ビジネスという、くくりで結ばれたとてもいい関係。実を言うと中年男はそんな関係から一歩踏み出して、さらに深い仲になりたいと考えている。いわ...

音楽

「はじめにリズムがあったなんて誰が決めたの?」と言ったのは春子さんで、しばらく反応できずにいたら、「言葉があって初めてリズムが成り立つんでしょうよ」「そうかもしれませんね」僕は言葉を選んで続ける。「言葉があって、それを伝えるためのリズム、悪くない発想だ、しかし」「しかし」「やはりリズムが初めにあったような気がするんです」どうして、と春子さんは薄いカルピスをひとくち。「だって動物は音を鳴らすじゃない...

炭酸水の泡がはじける

「カルピスが」ぼくは耳を疑う、春子さんがカルピスのことを語りだすなんて信じられるだろうか。いいや信じない。これは夢だ。あるいは幻だ。霞に操られている幻想だ。春子さんはあくまでも饒舌だが、カルピスのことは語らない。それはルールだ。世界のルールブックとして登録されている。春子さんがカルピスのことを語れば、世界はやや不安定になると言われている。専門家が口を揃えて「やめなさい」と言う。春子さんがそんな戯れ...

ガラス戸のない家

「スケルトン」「なんですか薮から棒に」「体がスケルトンだったらいいのになって」「いやですよ、絶対後悔するな」「なりたいとは言ってない」「じゃあなんですか」「たとえば体がプリンだったら困るでしょう?」「そりゃ困るどころの話じゃありません」「だからスケルトン」「スケルトンになる必要もありませんが」「けれどもこの退屈な世の中にドロップキック」「つまり?」「なんか刺激が欲しい」「それがスケルトン?」「スケ...

雨に濡れた洗濯物あるいは

「せんたくものが乾かない」「冬ですからね」「仕方ないの?」「風通しの良いところで太陽光に当てれば問題ありません」「そんな場所ある?」「この世のどこかに存在します」「どこ」「ナポリあたり」「ナポリタンの?」「語源にはなってるでしょうね」「太陽光がたくさんある?」「ありますね」春子さんはカルピスの言うことに耳を澄まして、ナポリに行きたい、という。「休暇を取りましょう、まず」「毎日休暇みたいなものじゃな...

今日は華子とランチ

「はなこちゃんはおさななじみで」「おさななじみ」「ずっと友だちだからなんでもはなせるのね」「にわかには信じがたい」「恋愛のことも」「れんあい?」春子さんの口から恋愛なるフレーズが飛び出すとは思ってもみない。「初恋の悩みもはなしたり」「まるでガールズのようですね」「ガールズでしょ」「ガールズなんですか」「アドバイスをもらったり」「恋愛に関するアドバイスですか」「もちろん、南の方角にむかうといい」「ア...

定義の騎士

「リンゴの定義を答えよ」「なんでそんなに偉そうなんですか」「答えよ」「りんごですか、そうですね」「すぐに応えよ、理論武装するなかれ」「する暇ありませんよ、りんごですよねわかりました、りんごは赤く甘酸っぱく丸いもの」「つまり?」「果物」「JAZZで言うと?」「JAZZ?」「サックスかフルートか」「スゥイングでしょうか」「うぬう」と言って春子さんはりんごカルピスを飲む。甘酸っぱい匂いはカルピスに包まれても健在...

あなたならどうやって世界を救える?

「かんたんにかんがえないほうがいい」そりゃそうでしょう、けれどたまにはかんたんに考えたい。「いやそんな深い意味でいったわけではありませんよ」「けれども、悪党は世にはばかる」「そんなスケールの大きなはなしではなく」「スケール?」「正義の味方というわけではありませんし」「知ってる」「ばくぜんとでいいじゃない」「悪党はどこで聞いているかわからないから」「仮に」と言って僕は金魚鉢に目をやる、ぱくぱくとくち...

威・風堂々

「風が吹くだろう」「今ですか?」「今ではありません」「いつですか?」「じきに」「じきに」といってぼくはお茶を入れる。さめた麦茶はのどごしさわやか。「風が吹けば桶屋が儲かると言いますが」「落語家」「あれは実際儲かるんでしょうか?」「儲かります」「その理由は?」「風が吹くと、屋根が壊れるでしょう」「相当な強風ですね」「屋根が飛び交う町です」「町」「町」という春子さんはカルピスをみつめている。返事はない...

文学、SF

「空想の源はおしべ」「やや発想が飛んでいるように感じます」「おしべが最初にあって空想は産まれたの」まずおしべの定義をまずたずねようと思う、5時を知らせるチャイムが鳴り終わってから。「めしべの立場は苦しくなる」「めしべもいるんですか?」「なにせおしべが空想を高ぶらせてふるふるしている」「すごい動くんだ」「めしべにできることはといえば、黙ってコーヒーをいれるだけ」「人?」春子さんはカルピスの瓶を少し持...

概略の概略

ひとしが19人になる。秩序は保たれるのか、と報じられる。コメンテーターは憂いを帯びた表情で言う。ついにこの日がきましたか。きてどうなるのか、そんなことには触れない。なぜならわからないから。19人になっても何にも変わらないから。いいや、とコメンテーターは反論する。風向きが変わり、国と国の間に新たなる国が産まれる。どういうこと、と司会者は困惑する。知ったことかとコメンテーターは続ける。産まれた国はおん...

音楽、JAZZ

「たとえばピアノとピアノに挟まれたらどんな楽器でもピアノになるでしょ?」「なりませんよ」「ぜったい?」「なりません」「みたことあるの?」「ないけど」「じゃあなるかもしれない」「なりません」「だってピアノよ?」「ピアノはオセロじゃありません」「オセロじゃないのは知ってる、ただしルールはそのまま適用されるはず」「ルールも適用されません」「されるはず」「ほかにそのルールが適用されるのをみたことがあるんで...

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Author:なゆら06
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