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野球/ジャルジャル

キャプテンになって見上げる空はどこか切ない。
栄光を掴み取ったものだけがわかる達成感、満腹感、もう手に入れるものはない憂い、そこに漂うやらなにやら忙しいほどの感情、に浸っている暇はない。キャプテンになりチームを大会優勝に導くのが乙なのだから。
キャプテンの仕事は高層ビルほどある。もちろん監督はいるのだが、何もかも監督にまかせきりではいけない。そうするキャプテンももちろん存在する、が、俺は自らが動き、把握し、チームを育てるキャプテン、それを目指しているのだから。忙しい。高校生なのだから学業もおろそかにできない。中心選手に限っては野球に集中したほうがよいのでは、との専門家の意見もある。その意見に傾いたときもあった、しかしそれで得たものは何か、何もない。ただ、称えられて、記憶に残り、それで自分に何をもたらすのだ。だいたい俺は中心選手でないし、試合に出たこととかないし、学業をおろそかにしたら即退学が待ってるし。必死でくらいつかないとどうしようもない。それで両立する賢明さ、とかを評価いただいて、推薦でもなんでもしてもらいたい。その辺を攻めないことにはちと厳しい。野球に集中していた時代のつけがまわってきている。つまり誰か見ているときにしっかりしたキャプテン像を見せておけば大丈夫、誰も見ていないときにキャプテン像を主張してもこれ仕方がなし。肝心なポイントだから。
で、なんだこいつ、テキーラ帽子をかぶってどういうつもりなんだ、テキーラ帽子であっているのかな、よくわからないけどまあ、入部希望していた奴だな。無邪気な面して、野球やりたいです、て感じ。若いねえ、欲がないねえ。まったく。今誰も見てないなあ、意味ないなあ、この無邪気ボーイの指導なんてしてみる気になってるけど、せっかく。誰か来ないかなあ、キャプテンの指導力のおかげで野球が好きになりましたといわせる場面を見てくれないかなあ、突然やってくるとも限らんし、何処をとっても完璧な指導中で遭遇しなければならない。
「ええと、君、野球ははじめて?」
「はい」
「そうか、わかった、うん、誰でもはじめてはうまくいかんから」
「じゃあ、ゆっくり教えるからちょっと真似してみて」
「いいかこう腰を入れてバットを振る」
「郷です、郷ヒロミです」
もう郷ヒロミも真っ青。
意味がわからなかった、なぜここで郷ヒロミなのか、わからない。
「そうか、そこからか、わかったわかった0から教えてあげるから」
この場面をなんとしても見てもらいたかった。この根気強さこそが、これからの企業で使える人間ですよ。
気を取り直してテキーラ帽子には、バットを構えることから始めてもらおう。
ええと、僕の真似して、といってもダメであった。テキーラは構えることができなかったのだ。バットをまっすぐに構えることができず、するするとしたに落ちていく。
「はい、握って、バットを握って」
「え、どうするんですか」
「ほらバットを握るだけ、ほら、落ちる落ちる、こう、これ、見て、まねして、ほ、ほ、ほ」
「ほ、ほ、ほ」
「違う!」
うんざりしながら、しかし、企業戦士たるもの企業戦士たるもの、と自分を奮い立たせて。
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