FC2ブログ

Entries

まぐろ その14(執刀医編)

「まぐろ その13(執刀医編)」


手術中というランプが消える。
自動扉が開き中から白衣を着たマグロが疲れきった面持ちで出てくる。
駆けつけていた重態患者の妻はあっけにとられた。妻は一瞬状況を忘れてよだれを垂れ流した。
当然である、時価にして300万はするであろう立派な黒マグロであった。
立ち会った別の医師、手術助手などもマスクはよだれのためにぬるぬるしていた。
われに返った妻が恐る恐るマグロに詰め寄る。
「先生、おとうさんは、無事なんですか」
マグロは、目をそらし、ゆっくりと首をふった。
「それはつまり」
マグロはもうそれ以上は何もいえないという風にうつむく。
代わりに答えた医師は、
「先生は大変有能な方です。その先生が全力を尽くして執刀されました。しかし、病気の進行は思ったよりも深く、戦った挙句、勝つことはできませんでした。これは我々の敗北です。しかし、それは仕方のないことだった、と理解してください。なぜなら先生は大変有能な方なのです。我々では手の施しようがなかった。それがすべてであります。とにかく先生は大変有能な外科医ですから。」
と、よだれを流しながら説明した。それをよそにマグロはてくてくと音を殺して歩き、向こうを向いて立っていた若い女の看護士に両手で、だーれだ、とやり、看護士は、うーん、誰ですかあ、と媚びるように振り向いたのが見えた。妻は、それらの件をにじんだ背景として認識した。
スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://nayura06.blog27.fc2.com/tb.php/1150-d055b591

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

なゆら06

Author:なゆら06
FC2ブログへようこそ!

月別アーカイブ

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR