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まぐろ その17(結婚式編)

「まぐろ その17(結婚式編)」

それは涙だったのかもしれない。
娘が嫁いでしまうという喜びと悲しみとが入り混じったからだのそこからくる振動だった。マグロは人目をはばからずに目から液体を流した。涙というレベルの塩分ではなかった。潮水に限りなく近かった。それもマグロの体内で凝縮された死海よりも濃い潮水だったマグロは、ぬぐうこともせずにただ嗚咽をあげた。
静まり返っていた。マグロが号泣しているのである、誰が陽気にできようか。
ほんのつかの間であった。
さっきまでとは打って変わって式は厳粛に進んでいた。
お祭り騒ぎであった。歌いだし、泣き出し、笑い出し、本能のままに出席者は立ち振る舞っている人間をよそに、マグロはしくしくと酒をあおった。自分を痛めつけているようだった。女の子がマグロにつまみを差し出した。つまみはマグロの身を固めて乾燥させたものだったが、マグロはかまわずに会釈してそれを受け取った。
マグロは酒におぼれた。どうしようもなかった。ただ深く悲しかった。
そして、マグロが新郎もしくは新婦のどういった関係の親族もしくは友人であるのか、誰ひとり(新郎新婦でさえ)分からなかったがなんとなく言ってはいけないような気がして黙っていた。
マグロはようやく涙をハンケチで拭いて、フォアグラのソテーにフォークを入れた。
その様はナイトさながらに実に華麗であった。
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コメント

[C424] Unknown

>えくすかりばーさん

きっと築地関係の方でしょうね。

マグロの背負う宿命を手に入れたかったのでしょう。
色々背負ってますからねマグロは。


>三四郎さん

あんまり意味も知らずになんや英語がずらずら並んだTシャツ着てたりしますからね。
英字新聞だと無条件でカッコ良いんで、包み紙でも使えるよ、みたいなね。とんでもない記事かもしれませんしね気をつけましょう。

思ったより続いているマグロシリーズは、様々な場面を用意して、主人公がマグロだったどうなるかという実験です。もしもシリーズです。
キャラクターをできるだけ消していたのですが、だんだん、紳士だけど子どもの心を持っていて憎めないいい奴、と固まってきました。

マグロの持つ力でしょうか。
  • 2008-12-31 01:17
  • なゆら
  • URL
  • 編集

[C425] そういえば

漢字や仮名文字を妙に有難がる外人さんが多いようです。Tシャツに「誠」とか「幸」とかはまあいいとして、「牛肉」だの「おでん」だのとなると、その意味を教えたくなる老婆心が疼くと言うもので。これが刺青となると目も当てられませんな(一生「牛肉」と生きるのかよ)。

さて「マグロ」ですが、こいつはなかなか「哲学的な顔」をしているとかねがね思っておりました。およそ「喜怒哀楽」というものが無い。それを言ったらイワシでもサンマでもそうなんですが、そこは「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」というわけで、やはり「魚の王」たるマグロでなくては擬人化は適わないということでしょう。泣くも笑うも食べるも死ぬも、およそマグロ以上の当たり役者は思い浮かびません。

>マグロはようやく涙をハンケチで拭いて、フォアグラのソテーにフォークを入れた。
その様はナイトさながらに実に華麗であった

タコやイワシじゃこうはいきません。
  • 2008-12-30 22:33
  • 三四郎
  • URL
  • 編集

[C426] Unknown

「マグロ」の文字を背中に刺青してた人を見かけました
  • 2008-12-30 17:03
  • 東京えくすかりばー
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