FC2ブログ

Entries

オーロラの彼方

降りてくるオーロラ、すんでの所であたしはかわして、氷の大地極寒仕様のトレッキングシューズで踏んだ。靴裏にびっしりとついている金具が比較的やわらかくなっている氷に食い込んで、ざくっと鳴る。オーロラはなおも風に揺れる巨大なカーテンよろしく優雅な舞いで、私の頭上にあり、降りてくる。発する空はひたすらオーロラのために黒子に徹する。オーロラをいかに優雅に、大胆に、動かすのかを計算しつくしたプロデューサー。舞いをやめぬオーロラに感嘆の吐息、この氷の大地のいたるところに吐き出される。何度見ても圧倒される、何年見ても圧倒される、圧倒され続けたまま、ひれ伏すしかないこの大地にただ、私はひれ伏すしかなく、力なくうつむくのだ。オーロラはそのような矮小な存在に、オーロラに挑み敗れ去った存在に手を、花束を持ったその左手ではなく、何も持たぬ右手を私に差し伸べる。やがて、やけに明るくなったその空の向こう、透けて見えるのは向こう側、空の、オーロラはその場所に連れて行こうとする。恐ろしい、げに恐ろしいが美しいその、この世のものではない光景に魅せられたものは、ふらふらと立ち上がり、涙、嗚咽を洩らしながらオーロラに包み込まれる。瞬きの間にオーロラに取り込まれたちいさな存在はその輝きの一部となって、この大地、またさらに広い海やビルディングを見下ろしている。その表情を自在に変えて、時々驚かせながら見下ろしている。天海さんは、とうの昔にいなくなっていた。はじめからそこに存在していなかったように、すっぽりと抜け落ちた時間のように、残念ながら私は何も覚えていない、見ていない、聞こえていない、感じていない。
スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://nayura06.blog27.fc2.com/tb.php/1287-3b9045d6

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

なゆら06

Author:なゆら06
FC2ブログへようこそ!

月別アーカイブ

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR