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気弱カモシカ

「はあ、そうですねえ」とカモシカは行員の説明にわかったようなわからぬようなしかし、決して再度質問を繰り返すような強気なまねはせずに、曖昧にうなづいた。定期預金と普通預金、その違いについてわざわざ動物園から聞きにきたというのに、その説明の2割も理解できずに、及び腰のまま。カモシカだからといって、その髪をうしろで束ねて青色のメガネをかけた行員はちっともそれを考慮せずに、最小限度の言葉で説明する。顔色一つ変えない。カモシカは、自分がカモシカだから多少は驚くし、カモシカだということを考慮したコミニケーションを図ってくれると考えていた。だからその全く動じない行員に、心底驚愕している。カモシカの表情は読み取りにくいから、何も変わっていないように見えるが、もう鼓動だけで全身がバウンドしそうなぐらいである。行員は、ポーカーフェイスを装っていたが、実際はひどく混乱していた。カモシカに対する説明方法など研修でやってないし、カモシカ来たことなかったし、だから先輩がどういう風にカモシカに応対するか見せてもらってないし、試されてるのだろうか、私の最終試験なんだろうか、などとあらゆる自問自答していた。カモシカだから、うしろにいる、横にいる先輩は、何も言わない。どうすればいいか、困ったときはたいがい、そっとアドバイスをくれたのに。静かに広がった波紋は銀行を包み込んだ。突然、そのなんとなくクリスタルな空気に耐えられなくなったカモシカが、気勢を上げて逃げ出す。と、行員も突然気勢を上げたカモシカに、なんとか耐えていたものが破裂、涙がどっとあふれ号泣。支店長・本田清彦が駆け寄り、ブレザーをさっとかけてやった。しばらく誰も何も言わずにブレザーを脱いだカッターシャツ姿の支店長、その背中に透けたブラジャーに視線。
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