FC2ブログ

Entries

ピカソは破れ、犬は吠える

破れるとき、かすかに悲鳴が聞こえた。きゃあ、と女性の声の悲鳴が、辺りを見回したが誰が上げた悲鳴なのかわからなかった。驚いているものは誰もいなかった。絵が破れてその価値が限りなく0に近くなるということを嘆くものはいなかった。もともとそれで生活をしている訳でもなく、村の宝として、シンボルとして、昔からそこにあったもので、それが破れてしまうということは、たしかに悲しくはあるが、それでどうということもなかった。専門家は嘆いた。世界の宝を無駄にしたのだ、と破いたものに詰め寄った。が、破れたピカソが元に戻る訳でもなし、仕方なく破れたピカソを拾い集めてため息をついた。ピカソの描いた女は相変わらず妖艶で、奇妙な角度に体が曲がっていた。破れたとはいえ、ピカソであるから、安易に捨てる訳にもいかないし、さてどうしたものかとつぶやくと、ピカソは捨てればいいと応えた。耳を疑ったが、幻聴であるとしてもそれがピカソである可能性があるかぎり私は信じたい。私は結局、押し入れの中に放り込んだ。すると犬が吠えだした。吠えて何かここを掘れと主張しているようだった。実際掘ってみると中から死骸が出てきた。身元は不明であった。ピカソをそこに乗せて再び土をかけておいた。やけに風の強い日だった。
スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://nayura06.blog27.fc2.com/tb.php/1645-48c24a4b

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

なゆら06

Author:なゆら06
FC2ブログへようこそ!

月別アーカイブ

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR