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拝啓

芥川賞をください。
とにかくください。くださればそれで結構、実に結構。
あとは何も言うことはありません。
ただし、今すぐにください。今すぐでなければ意味がない。ただくださればいいのです。簡単なことでしょう。話し合いがなされるのであれば、そこで、展開を私の受賞に持っていけば言い訳です。簡単な話でしょう。
私には時間がない。他のものにはまだ可能性がある。次にくれてやればいいわけです。私は次がない。ない確実にない。しかし、私に芥川賞をくれるならば、次はある。これから長く私は小説を書き続けるでしょう。永劫、未来残る傑作を書き続けるでしょう。構想もあります。ここだけの話ですが。おそらく傑作になるでしょう。もう9割方出来ています。完成しているようなものです。それを世に出さねばなりません。文学が呼んでいるのです。私の作品をでておいでと呼んでいるのです。私はそれに応えなければなりません。応えなければならないのです。お願いします。受賞できない場合、私は死にます。単刀直入に言いましょう。死にますよ。
人殺し!この人殺しめ!人でなし。人でない家畜以下!家畜以下に私の作品の価値が分かるのですかいったい、何を根拠に判断をするのですか。しっかり説明してもらわないことには納得できませんなあ。あなたに私を納得させられるでしょうか。この、小説の鬼、と自称している私を。まず不可能でしょう。不可能に決まっている。なぜなら私は納得しないから。ややこしいですよ。私が駄々をこねている様を想像してください。私はやめませんよ、デパートで泣きじゃくりながら手足をばたばたされる子どもさながらデパートで泣き叫びますよ。いいんですか。パフェで稼げるのは最初の10分のみですよ。あなたに耐えられるだろうか。まあ無理だろう無理だろう。悪いことは言わない。私にくれればいいんだ。それですべてうまくいく。傑作も生まれる。人も死なない。殺人も起こらない。私には賞金が入る。いいではないですか。それで。ほら、スケートリンクでは女の子が舞うよ。
 スケートリンクでは女の子が舞うよくるくる。簡単そうだ。私にも舞えそうだ。あの娘の手をとって、体を密着させて舞う。ぺったりと表面積を、あの子のものにして、皮膚呼吸等市内で、一心不乱に私は子とともに舞う。
 そうして、エネルギーを得る。次の作品を書く為のエネルギーを得る。
 そうして、私は傑作を書くわけです。
 苦労しているのです。そんな風に私は書き上げた、苦しかった。もうやめようと何度も思った。しかし、諦めなかった。正解でした。出来上がりました。文句等何もない。選択の余地など何もない。これが後世に残る傑作。
 確かに、候補に挙がっている「むしゃぶりついて豚」はなかなかよろしい作品だ。私も感心したあれを読んで、度肝をぬかされた。田代君も成長したものだ。と思った。まあ、200年ぐらいは残るだろうか。せいぜい300年だ。いい作品だと思いますよ。だから来年もう一度挑戦してもらえばよいじゃないですか。才能あるよ、根気もあるよ彼。私は根気がない、だから今年、今出ないともう手遅れになってしまう。さあ。ください。がっつりください。私の作品と比べてみなさい。とたんに色あせてしまう。いいでか、私はあれを書く事もできるのです。ああいう風な作品を書く事もできるわけですしかし、しかしあえて書かない。だって、田代君書くし、かわいそうじゃないですか。私の広い心、それをしっかり評価に加えてもらわないといけません。
 だいたい田代君等、そういう私の好意を全く知らないのか、はたまた知っていてあえてそうしているのか、私を目の敵みたいに接するから馬鹿だ。全く馬鹿だ。
 いいじゃないか、彼は彼なりに必死に生きているわけだし、最近赤ん坊が生まれたってね。言ってましたよ。私にもうれしそうに言ってましたよ。で、今借りてきましたその赤ん坊。
 芥川賞をくれない場合、私はこの赤子の手をひねります。ひねることにしています決めてますから気をつけてください。いや、これは脅迫でもなんでもないのですよ。たまたま赤子がいるんでひねるだけで、それ以上の意味はありません。
 ひねるだけでは収まらずにねじりねじりアキラの首に巻きつけて話題を掻っ攫います。きっとアキラは大変喜ぶことでしょう。これはいい、もげそうな赤子の首にダンディズムを感じるね、と言ってくれるでしょう。そうなれば困るでしょう?大変困るでしょう。だって、アキラの機嫌が良くなるのですよ、すなわち池の神様であるトオルの機嫌が悪くなり、池は荒れ、人類に多大な被害が出てしまう可能性があります。いやたった10平方メートルの池だと言って侮ってはいけません。世界を変えてしまう恐ろしい池なのです。
どうしてだって?
 池にはいれば分かります。池は世界に通じているのです。
 そこを経ればどこにでもいけそうなのです。
 まあそれは置いておきましょう。話を戻しましょう。
 はっきり言いましょう芥川賞等というものは、馬鹿なんだ。馬鹿でしかない。
 いいや、それでいいや。
 馬鹿の賞なんて要らないよ。僕要らないよ。そんな物に価値はない。
 さてナイフを持った。切れ味鋭そうなナイフだこと。さぞかしきれるのでしょうね、猫でも、腕でも、首でも。うへへへ。
 大丈夫、私はいたって正常、精神状態良好。確定申告だって出来そうなぐらいクリアな脳内、住んでいるのは小説の神様、写実主義がどうこういっているから、神様。

 あ僕君の住所知ってんだ。じゃあ今からそこ行くね。
 鉢合わせだね。いいんだ。関係ないんだ。じゃあ、扉をノックするものはすなわち僕だからよろしく。
 
 妻を、妻を貰ったのです。
 妻はいい女です。こんな私を立ててくれる。一歩引いて、私を支えてくれる。そんないまどき珍しい女です。自分というものを持たない、決してもとうとしない。持つことは汚らわしいことなのです。持つべきではないのです。小説家の妻たるや、小説家を陰から、時には生活の糧を稼いで、芸術的傑作を生み出すサポートをする。そういうのに適した女です。私はほれています。完全に、完膚なきまでにほれています。彼女無しでは生きていけないでしょう。その妻に買ってやりたいのです。エコバックを買ってやりたいのです。エコバックがなければ、追加料金を取られ、結局損をすることになる。そうならないためにはエコバックが必要なのです。損をするということは、彼女にとって死なのですから。
 エコバックだけではありません。もちろん、ほか様々な必要物があります。それをいちいち聞いて私は妻のために購入したいのです。
 購入しても何も変わらない、と思う人もいるでしょうしかし、そんなことは問題ではないのです。すなわち、気持ちの問題。誰がどう思うかそれだけ。
 先生はどう、どう思いですか。
 貰わないとなると、そうですね、こちらにも考えがあります。はい、はっきりとした脅しです。みていなさいみてなさい。先生。私は先生を見て育ちました。だからこそ、こんな風に頼んでいるのです。ああ、頼んでいるのです。私が人に物を頼むことなんてありませんこれから先も、これまでも、ありませんそういうものです、だから、これは一生に一度きり、本当に必要なときしか私は頼みません。
 さあ、ください。余すことなく下さい。それでいい。それでいいのです。
 ひねりますよ。マジでひねりますよ。もう私も疲れました。待つことに疲れました。そろそろ、結果がほしいのです。結果が伴わない作業は疲れます。作業です。まるで作業です、芸術でもなんでもないすでに、最初は違った、しかし今は単なる作業です。その不毛な作業をせめて評価されないならば、私はなんと言うか、死ねといっているわけですね、そうか、そうなのか。まあ、それならそれでいい、はっきり言ってください死ねと、そしたら私は悔いることなく笑って死ぬでしょう。
 最初は良かった。
 本当に楽しかった。作業はとても楽しかった。夢のようだった。
 夢を見ました。
 奇妙な夢でした。まあたいがい夢というのは奇妙な物ですが、その中でも特別奇妙でした。必然的な奇妙さでした。奇妙というクリームで包んだスポンジ生地でした。スポンジはやわらかく手、口当たりがよく解けるように舌の上にありました。苺が挟んである。酸味が口に広がります。果実の香り。それを私は逃さずに取り込む。身体から果実、酸味、苺の果汁が飛び散るのです。
 富士の夢です。
 私は富士を登っていました。頂上を目指していました。紛れもなく私は富士にいました。そして富士を感じていましたまるで、私の一部としてそこにあるような気がしました。
 気のせいではありませんでした。私は富士でした。

 私の二の腕のところに女が二人歩いていました。ちょうど月見草が咲き乱れている。二の腕の辺りです。女は富士にいるやはり、登山している。富士など、街みたいなものだからもうすっかり軽装です。軽装で登れるのです。その昔は違ったそれでも酸素など、爪みたいなものなど、持って、登らなければ危険だった。そういう山だった。のが、整備され誰もが安易に登りだし始めた、それは、それで、いい。
 女二人がのぼってくるのだからそれならいい。二の腕がプルプルと揺れる。
 運動不足だからプルプルと揺れた。
 女はそのプルプルに揺れながらしかし、私のにのうでがゆれているとはおもっていない。ほんの少し風が、強く吹いてきたぐらいにしか感じていない。世界はずっと回っているのに、だれもそれを強くは感じないのと同じように、私の二の腕がプルプル揺れているのを感じているものはいない。
 女は、記念、記念、とつぶやく。どちらも、どちらも記念、記念を愛しているようだ。それを私はほほえましく思いながら、しかしどうしようもない嫌悪感にとらわれる。お前の歩いているその地は、お前の足が踏みつけているその地面は、私の二の腕なのだ。その二の腕で記念記念うるさい。
 しかし私はそう思うだけで、実際に口にすることはない。
 私は物静かな富士である。
 女二人は私に写真をとってくれとせがむ。女二人の笑顔が迫る私の体温は上がる。しかし何も言わないそれは、私が決めたルール。私は彼女らにとって登る物であればいい。
 富士は立ち上がる。
 カメラを受け取る。
 「簡単です、富士山でも扱えると思います。この上についているボタンを押すだけですから」
 という声とともに落ちていく女二人、真っ逆さま。湖にはまって、沈む。

 目が覚めると、私を覗き込む女がいた。妻です。
 なんと言うことはない、妻がたまたま私を覗き込んでいただけです。
 私は妻を抱き寄せ、着ていた服を剥いで、乳房を口に含む。
 ミルクが出てきてこんにちは、坊ちゃん一緒に遊びましょう。

 妻と交わった後、子の額に口付けをし、眠りました。
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春をあいするひとは心清きひとなんでせう。
  • 2012-09-03 22:55
  • 知余子
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