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女より仕事に打ち込め。だが、本は読み続けなさい

それはちょうど5月の連休が終わり、みんな仕方なく仕事にでてきて熱いお茶を煎れてずずずずと惜しむようにすすっていたとき、西田くんは言い出したのだ。西田くんはまだ20代の半ばこの仕事をはじめて4年、普段はおとなしく滅多に口を開かない、無駄口も叩かずじっと仕事に集中して、しかし相づちは打ってくれる。目立たないけれど妙に存在感がある私の部下である。何の脈絡もなく、女がどうこう言った話を誰かがしていたわけでもないし、本の話をしていたわけでもない。だから一瞬、西田くんが何を言っているのか理解できずに、誰も何も言わずぽかんとして、お茶をさらに一口飲む音がオフィス中に響いたのだ。不況を受けて新人の採用をひかえている我が社で、西田くんは最も経験の浅い、みなの後輩ということだったから、敬語を使わない西田くんを見るのも初めてで、戸惑ったのだ。次に口を開いたのは西田くんにいちばん近い新婚ほやほや木本さんだった。「え、何?どういうこと?」「女より仕事に打ち込め、と言ったのだよ」「言ったのだよ、ってあんたその口のきき方なんなのよ?」「女なんて淡い幻みたいなものだから、幻を追い求めるよりは現実の仕事に打ち込んだ方が自分のためだよってこと」「いや女は幻でもないし、その口のきき方、あたしに言ってるの?」「いや木本さんだけじゃなく、この場にいるものすべてに、本はよみ続けなさい」「ちょっと、冗談にしてはタイミングやワード選択で誤ってるから、今のうちに気づいてよかったじゃない」「黙ってくれますか木本さん、そしてその糞尿のような香水の匂いを今すぐ消してください」糞尿あつかいされた木本さんは顔を赤くして叫んだ。「あんた、それが冗談でないならでるとこでるわよ、覚悟しときなさい」みんなあぜんとなったよもちろん。西田くんはそんなに勇気を持っている人だったなんて、みんな心の中で拍手をしたよ。だって実際木本さんの香水は糞尿の匂いがしていたから。その後木本さんはオフィスから出て行ったよ。西田くんはまだしゃべっているよ。訳の分からないことを。結果オーライってこういうことじゃない?
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