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斜向いに天狗

つる子さんは「あかん」と拒んだ。
「あかんのよね、あたしまだ処女のままでいたいからあ」
大変色っぽくて困る。わたしだって、惚れちゃいそうです。そんな気ないのに食べちゃいたくなる。唇ちゅっとうばっておいてそれからそれから、と突っ走り気味に涎さえ流れ落ちそうになりながら、飲み込んで我慢する。
つる子さんは天狗で、処女らしい。
天狗は助平で、たいてい、見境なく女を抱く。という性質があるそうだけれど、つる子さんは守り続けているのだという。天狗の女は助平ではない。一般には。
「だって、処女っていうのは愛する人に捧げるものでしょう」
「古風ですね」
「それが女の幸せってやつじゃない」
「一昔前すよその発想」
「あたしは古風で天狗」
とつる子さんは、羽ばたいて枝に停まる。枝はぎしぎししなってつる子さんを乗せて置けない。つる子さんは羽ばたいている、が下りてくる気配はない。「あたしは古風で天狗」ともう一度つぶやいた。もう、思わず抱きしめたくなるような、はかない目をしている。つる子さん好き、とわたしは彼女に聞こえないようにつぶやく。
つる子さんは天狗だけれど、鼻が長いとか、顔が赤いとか、身体的な特徴は何もない。獄普通の人間の女として、紹介されたなら、そう信じるだろう。疑う余地などない。
先ほど、羽ばたいて枝に停まる、と説明した。しかし、実際にはただ登っただけである。つる子さんはするする木を器用に登って、枝に座る。そのスムーズさが羽ばたいて登ったように感じたのだ。だから当然羽など生えていない。
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