FC2ブログ

Entries

夏木、卵かけご飯に顔をうずめて死にたい!

夏木ユタカは卵かけご飯が大嫌いであった。食べるのはおろか、もう見るのもイヤ、食べているのを見るのもイヤ、存在していることがイヤ、卵もイヤ、いや、卵はイヤではない、むしろ大好きだ。それを生で飯にぶっかけて食うことがたまらなく嫌なのだ。ここではそれが名物ですからぜひ食べていてください、と卵かけご飯を出してきたからだ。ユタカは焦った。もちろん嫌なのであるが、相手を傷つけてしまうことはあまり望まない。ここで傷つけてしまえば仕事がなくなってしまう。せっかく呼んでもらったディナーショーだ。久しぶりのディナーショーだ。俺を呼んでくれるところがまだあるなんて奇跡だとさえ思える。なんとか、成功を収め、次につなげたい。俺はまだやれる、十分やれるんだ、ということを世間に示したい。ここでうまくやれれば、また次のチャンスをつかむことだってできる。鳴かず飛ばずの俺だけど、ここを乗り越えたなら神様は微笑むのかもしれない。後一歩のところあと一歩。ユタカは自問自答を繰り返し、卵かけご飯を食べることを選択した。なに食わぬ顔で、これを食べきることができたら俺の勝利だ。俺は再び勝利を収めることができるのだ。なんとか、笑って、この卵かけご飯を食べきる。俺は食べきる。とうなづき、箸を手にした。身体の心から震えていた。俺は今、卵が存分にかけられたご飯を食べようとしている。あんなにも嫌だったご飯を、芸のため、生活のために食べようとしている。顔を上げる。満面の笑みをうかべた人々が見守っている。とびきりのごちそうをさあどうぞ、とその目は語っている。ユタカは意識がもうろうとしてきた。卵かけご飯が、豊かに語りかけているような気がした。さあユタカ、食べてごらん、ぼくを食べてごらん、飯の甘みと醤油の風味、卵の濃厚なうまみがひとつになったぼくは卵かけご飯さ。半ば無意識のまま、ユタカは箸で飯を掴む。太陽に手を伸ばすように。歓声が聞こえた。俺は今、永遠を手にしたのだ。永遠。
スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://nayura06.blog27.fc2.com/tb.php/2269-c68ce224

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

なゆら06

Author:なゆら06
FC2ブログへようこそ!

月別アーカイブ

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR