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123世帯の3日間停電

知らない。その間の村の様子はほとんど記録に残っていないし、今となっては証言をするものもいなくなった。ぼくたちは数少ない資料から、想像するしかない。123世帯はその真冬の夜に電気を絶たれ、いったいどうやって寒さやひもじさをしのいでいたのか。たった、123世帯だったことが、復旧の遅れにつながった。もしも、1万世帯が対象だったなら、電力会社ももう少し素早い対応をしただろうと言われている。たった、123世帯のために貴重な人員を動員して復旧作業にあたらすことをためらった。というのも当夜、ちいさなトラブルがあちこちで起こっていたのだ。それは経費節減のための弊害といっていい。経営者は経費を削れるだけ削っていたため、設備はパンク状態であり、いつ停電が起こってもおかしくない状況にあった。停電は積もり積もった結果だった。123世帯ですんだだけ、まだよかった。それ以上被害が広がらないように、人員をバランスよく配置する必要があったのだ。しかし、復旧作業にあたったものはベテランで、多くの復旧作業を手がけてきたものだった。かれにまかせておけば大丈夫、と経営者側は判断した。誤算は彼が娘の結婚式に出席していたことだった。一人娘の晴れの場で彼は涙をこらえていた。間もなく娘の両親に対するスピーチがはじまる、というときに連絡が入った。妻や、多くの親族は彼を止めたが、彼は現場に向かった。娘ならわかってくれる、彼は信じていた。実際、娘は理解していた。父親が大切な仕事をしていて、今、困っている人がいる、それならば自分の結婚式ぐらい気にせずに現場に行って、と娘は思っていた。わたしは電気作業員の娘ですよ、それで育てられたんですから。娘のスピーチは、父親に対する愛情に溢れていた。会場はナミダに包まれた。おそらく今まさに現場に向かっている父親にも伝わっているのではないかと思った。そうして彼はコンゴ共和国からハワイ経由で日本に向かった。ついた頃、彼の仲間がなんとか復旧作業を終わらせた。
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