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泣き虫/Lost In Time

泣き虫を見た。
あたしは泣き虫を温水プールの更衣室で見た。
水着からジャージに着替えているときに泣き虫はあたしのうしろに立っていた。
泣き虫は泣いていなかった。

泣いているから泣き虫なんじゃないよ、と泣き虫は言った。
いつでも泣いていると思ってたのかい?ええ?思ってたんだろう?と泣き虫はたいへん高圧的だった。
それだけであたしは辟易した。
今にもあたしの胸ぐらをつかみかかってくるような勢いだった。
あたしは急いでジャージをはいた。
関わっては厄介だと感じたからだ。
泣き虫はそれ以降黙って水着を脱いだ。

泣き虫がきていたのは水玉の水着だった。
よほど温水プールに似合わないビキニタイプの水着だった。
その泣き虫の姿を見て、あれはないんじゃないの、と陰口が囁かれていた。
ここはリゾートプールじゃないんだから、運動をするためにみんなここにやってきているんだから、それをまず理解した上で会員になるべきだわ、と中年の女性は囁いた。
あたしは、そうですねえ、と相づちを打った。
心底思ったわけではなく、ただその女性の意見を肯定しないと逆に長くなってしまいそうな気がしたからだ。
泣き虫は陰口を背中で受け止めてバタフライで泳いでいた。
あんまり激しく動くから、ぽろりっておっぱいがでてしまわないか心配になった。
ぴったりした水着はちゃんと泣き虫の身体を包んだままだった。
水着は泣き虫の身体に奇跡的にフィットしていた。

更衣室を出て自動販売機で野菜ジュースを買う。
ここ最近の習慣だ。
あんなに運動をしたのだから、あたしから老廃物は流れ出ているはずだ。
そこに野菜ジュースで栄養分を取込むのだ。
あたしは一気に飲み干した。
のどはごくごくと音を立てた。爽快感が遅れてやってきた。
あたしは爽快感とハイタッチをした。

泣き虫があたしのうしろに立っている。
またあなたなの、とあたしは思った。泣き虫があたしになにか用がある事は明白だった。
あたしから声をかける事はためらわれた。声をかけてしまえばそこで、あたしの負けだ。
あたしは泣き虫を無視した。
泣き虫があたしと同じ野菜ジュースを買った。
同じようにごくごくと音を立てて飲んだ。

あたしは自転車に乗ってマンションに帰った。
泣き虫がランニングでついてきた。
なんにも言わずについてきた。
あたしは泣き虫にラザニアを作ってあげた。
泣き虫は夢中で平らげた。きっとおいしいのだろう。
空っぽの皿をあたしに差し出した。
泣き虫の分しか作っていなかったから首を振った。
あたしはラザニアが嫌いだ。

泣き虫と始めた生活は実に平凡だった。
泣き虫はなかなか泣く事はなかった。
泣き虫のくせに、とあたしはつぶやいた。
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