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まぐろ、立つ

まぐろが立っている。
かなしそうに立っている。
西日が差し込むプールサイドに立っている。
泳ぎを忘れてしまったように、呆然と立っている。
目を見開いて立っている。

まぐろが瞬きせずにじっと見つめている目線を追うと、そこにカラスがいる。
一匹ではなく群れだ。
カラスの群れがまぐろの斜め上、電線にとまっている。
本来であればけたたましく鳴くはずなのに、全く鳴かずにカラスもまぐろを見ている。
両者は見つめあっている。

カラスの群れは狙っている。
まぐろがこの強い西日を受けて弱り、倒れてしまうのを。
そうなったら群れは一斉にまぐろにおそいかかるつもりだ。
久方ぶりのごちそうが間もなく食えると思っている。

たしかにふらふらとしてきた。まぐろは今にも倒れてしまいそうだ。
倒れたらもう起き上がれないだろう。
魚類として生まれてきて、今まで生きてきたことに後悔はない。
むしろ充実していた。魚類にしてはいい経験もした。
甘い恋愛もしたし、権力や富も得た。
我が魚生に後悔なし、とちいさくつぶやいた。

カラスはくちばしを磨いている。
その鋭いくちばしでまぐろの鱗を引き裂いて、3枚におろし、塩をふりかけ、軽くソテーしてから食うつもりだ。
くちばしは西日を受けて鈍く光る。

まぐろが自暴自棄になってしまったのは、ほんの些細なことだ。
まぐろには兄がいた。
正確には兄と慕う人間がいた。
兄もまぐろのことを本当の弟して接してくれた。
少なくともまぐろにはそう思えた。
兄は病弱だった。
不治の病を抱えていた。
まぐろはなんとかそれを治そうと奮闘した。
医師資格を取り、留学をし、経験も積んだ。
しかし、願いは叶わなかった。
医学は兄を救えなかった。
ちょうど昨日、兄は死んだ。
まぐろは絶望した。

自分が存在する意味を考えた。
自分を認めてくれる兄は救えなかった。
なんのために、いったいなんのために俺は生きているのか。
まぐろは走った。
つよい雨が降っていた。
雨はまぐろの身体を撃った。
まぐろはなおも走った。
身体がばらばらになってしまいそうな気がした。
このまま分裂して消えてしまいたかった。
まぐろは意識を失った。

目覚めると市民プールがあった。
シーズンオフであるため、水はたまっていなかった。
墓場であるような気がした。
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