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ピラニア・ナッテリーの主張

わたしが、公園の水路にいたわけですが、まずそもそも、わたしが強制連行されてこの国にやってきたということを知ってもらいたい。わたしは観賞用として、とらえられ、船に乗り、はるばる個の国にやってきたのです。別に自ら進んでやってきて訳ではありません。決してありませんからその点は注意してください。それだけなら、いいでしょう。わたしもアマゾンの川で平凡に生きていくだけでは面白くない。血踊るような冒険活劇を話し回りたい。そのためには個の国に連れてこられたのは好都合だ。受け入れる覚悟でやってきたのです。わたしは温室で飼いならされました。ぬるいぬるい、まるでお湯だ。わたしはもっと自分に厳しくありたい、なのに、こんなにぬるい空間で、ぬるい環境で育てられたら抵抗力だって弱まってしまうだろう。そういうことはなにも配慮されない。そしてわたしは甘んじたのです。まんまとその温い環境に甘んじて、堕落した生活を送っていたのです。非常に快適でした。餌は自ら捕獲しなくとも、上から降ってくる。定期的に降ってくるのです。味はそれほどよいものではない。むしろまずい。これは麩でしょうか。わたし用に開発された餌なのでしょう。最初は抵抗がありましたが、だんだんどうでも良くなってくるのです。だいたい、水槽の中で運動量も極端に下がっている。これで以前と同じようなものを食べていたら太ってしまうでしょう。わたしにはこの麩ぐらいがちょうどいいのです。栄養バランスも考えてあるのでしょう。研究者かメーカーが長い時間かけて開発した餌なのでしょう。だからちょうどいいのです。今のわたしにはこのぐらいの餌がちょうどいい。味もそんなに悪くない。なんとなく癖になる。食べているとだんだんこれでないと食べた気がしなくなってくる。これは以前の餌では満足できないのだろう。わたしはこの麩に依存してしまったのだ。なにかそういう成分が含まれている可能性がある。覚せい剤的な成分が。わたしを虜にするための、ここでしか生きていけないようにするための罠か。気付いたときにはもうおそい。わたしはすっかり依存していた。餌が降ってくるのを心待ちにする自分に気付いた。

ちいさかったわたしはどんどん成長する。最初の頃の3倍になっただろうか。水槽がずいぶんちいさくなってしまった。この水槽ではひとかきすればすぐに壁にぶつかりそうになる。餌の量は増えてくる。味は2種類あるらしい。塩味と、バーベキュー味、わたしはバーベキュー味の方が好きだ。それが降ってきたときには小躍りで食う。わたしは夢中で食べた。すべて食べ尽くしてしまう勢いで食べた。それがいけなかったのだと今は思う。その食いっぷりが気に入らなかったのか、餌が降ってくる機会が減った。極端に減って、わたしは常に腹をすかせた状態になった。いくら待てども餌は降らず、濁っていく水の中で、いやそれ自体は別にかまわないのだが、わたしは息苦しくなってきたのだ。

だから噛み付いたのです。餌が降ってこなくなってかなりの時間が経過した。ひさしぶりに見えた手だった。あの手が見えたときに餌は降ってくる。わたしは心待ちにした。けれど、降ってこなかった。わたしの中の野生の血がそうさせたのです。わたしは噛み付いてその肉を食いたかったのです。咀嚼して飲み込み、わたしの血や肉にしたかったのです。水槽は赤く染まった。そしてわたしは捨てられた。今も悪い環境じゃありません。やっぱり餌は自分でとらないとだね、ずいぶん苦労したけどようやくコツをつかんだよ。もう簡単にエサをとれるよ。野生の餌はあんまりうまくないね。今でもあのバーベキュー味を夢に見る時があるんだ。いつか食べてみたいねえ。
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