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料理女はかーっと腹をたて、墓からとびだして

料理女が腹をたてるのは、作った料理を残される時だけ。
それ以外で腹を立てるような料理女は、料理女の姿をした豚だ。
だからその料理女が腹をたてたのも、やっぱり作った料理を残されたからだ。

料理女は自信を持っていた。作ったのはオムライスだ。
たしかに奥が深い料理ではある、シンプルに見えて極めるには長い年月が必要だ。地道に修行し、経験を重ね、完成させたオムライスだった。
オムライスオムライスオムライス、と唱えながら作った。いつものことだ。そうすると美味くなる。確実に美味くなる。嘘みたいなはなしだけど、そのかすかな魔法の調味料が、最後にぴりりと利いてくる。オムライスオムライスオムライス。料理女は手を動かすよりもむしろオムライスと発音することに集中した。そうすることで、これまでは上手くいったからだ。特に失敗したとか、そういうことはなかった。だから完璧なオムライスをまた生み出してしまったか、とほくそ笑んだ。完全なる手応え、これほどの手応えを料理女はまだ知らなかった。
胸を張った。私は料理女だ。そしてオムライスを作った。料理女の顔は自信に満ちあふれていた。

悲劇が料理女を襲う。墓に入っていた人がでてきて、料理女の肩を叩いた。料理女は墓に入ることになった。自らの意志で入ったのではなく、止む得ぬ事情から、入らざるを得なくなったのだ。料理女は死んでいるわけではない。まだ言葉をしゃべることもできるし、考えることもできる。ゆえに我あり、と叫ぶこともできた。
墓は温かかった。ちょうど冷えていたところだ。10月に入ると朝晩は冷え込む、睡眠を貪るには寒さに対してなにか策を講じなければならなかった。墓の中はちょうどいい気温を保っていた。料理女はそこで思う存分眠った。疲れていたし、いくらでも眠ることができた。ちょっとやちょっとでは起きないぞ、と宣言した。誰に言うでもなく宣言した。そして目を閉じたのだ。そこではじめてオムライスは食卓の上で湯気を吹き出した。時間差で湯気が立ち上がる仕組みになっていた。オムライスは誰かに食べたがっている。

望むところだと名乗りを上げた青年はひげ面で、濃い眉毛をしていた。スプーンは偶然持っていた。もしかしたら今日なにかをすくういれない、という思いから鞄に入れておいたのだ。功を奏した、と料理女は思った。そして自前のスプーンでオムライスをすくった。さらに湯気が吹き出てくる。口に運ぶ。これは市販のケチャップではないぞ、と気付いた。ご名答、手作りのそれです。青年はさらに一口スプーンでオムライスを切る。口に運ぶ。繰り返した。単純な作業だった。

青年は食べようと思えば全部食べてしまえる。余裕だ。けれどあえて残したのは料理女の、視線を感じたからだ。墓のむこうからかすかに感じる視線だった。青年は逃げ出した。ここに長くいてはいけないと感じた。なにもかも放り出して逃げた。気持ちのよい朝だった。いつまでも走れそうな気がした。

料理女が腹を立てるのは必然、墓から飛び出して走り出した青年を追う。
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