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ダッタン海峡を黒い蝶々が飛んでいった

黒い蝶々はどこに向かっていたのか、西田はそれに応えることができないでいる。できないだけでなく、蝶々になりきっている。黒い蝶々を追いかけようとしている、西田は今、蝶々そのものだ。西田、蝶々を追いかけたって無駄だぜ、とぼくは思うが、西田の好奇心は象をも殺す。西田はひらひら、悲しみを垂れ流すように飛んでいく。西田、西田よ、とぼくは声をかけてみる。西田は黒い蝶々を追いかけることに必死で、ぼくの声を聞いてくれない。もしも聞こえているとしても無視するだろう。蝶々に人間の声は理解できないし。ぼくは虫あみを倉庫から取り出す。西田を捕まえてあげなきゃ。捕まえて標本として永遠の命を与えなきゃ。つまりぼくは神である。虫あみはふんわりと折り畳まれてそこにあったので、それをにぎりしめ勢い良く倉庫から飛び出る。西田はもう、空高く、虫あみの先の先。
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