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まぐろ

まぐろは急いでいた。まぐろの質が悪くなるからだ。どうしても間に合わせたかった。新鮮なままの体を切り分けて力を与えてやりたかった。落ち込んでいると聞いた。波の噂で聞いた。だったら自分が行って体を切り分けて力を与えなくてはという使命感で胸は一杯になった。そうなったらもういてもたってもいられないのがまぐろだ。急いで服を脱いだ。服をきたまぐろがやってきたらそれは驚くだろう。誰も、服をきたまぐろなんか見たくもない。まぐろはまぐろらしく新鮮な鱗をびっしりとぎんぎんとたぎらせているべきであるという固定観念、それをまぐろは気にした。言い方を変えれば夢を壊したくなかった。まぐろとしてのイメージダウンにつながることは避けたかった。だから服を脱いだ。ヤフオクで買ったお気に入りの服だったが、気にしている場合ではない。落ち込んでいるのだ。今、この瞬間にも落ち込みすぎて自傷行為に走ってしまう可能性もあった。だとしたらそれは自分の責任だとまでまぐろは考えた。故に太陽光線はまぐろの全身を容赦なくふりそそぐ。むしろ喜んでふりそそいでいるぐらいだ。こんなに立派なまぐろをみたことはない。いや、昔に一度見たことがある。それ以来2度目だ、と古株の光線は言う。そいつはまあ立派なまぐろだった。それに俺は目一杯ふりそそいでやったよ。すぐに腐ってしまったな。それが俺の役目なんだからいいだろう。いわけみたいに思う、これがいいわけならばなんて簡単な人生と思う。思うだけなら誰でもできるわ、研究生だってできるわ、とまぐろ。まだ踏ん張っている。ぎりぎりのラインで踏みとどまっている。それもこれも落ち込んでいると言う彼のため。それ以外にもう何もない。失うものなんて最初からなかったのさ。だから強いのだ。底辺の人間の強さをかいま見る。まぐろ人間ちゃうやん。まぐろはまぐろだよ、と乙女。まだおしめをしている。いやおしめをしているのは現実的な必要性からではなくて、性的興味として楽しんでいるだけ。だったらもう乙女でもなんでもない、ただの助平である。乙女がおしめをしていたらそれは助平である。そう考えて間違いない。改めまして助平はまぐろの身体にそっと毛布をかけてやる。かけたってなんにもならないことを知っている。逆に腐りやすくなるからダメだって、と魚屋は言う。これだから最近の若い子はなんにも知らねえんだから、ダメだよこれじゃ、せっかくのクロマグロじゃねえか。俺がさばいてやるよ。今さばかないといけないね。少しでも遅れたらその分まずくなるからね。今が一番いいよ。まっぴらごめんだとまぐろ。どうして海を捨てて走っているかと言うと、落ち込んでいる彼に一口極上を味あわせてやりたいだけ。乙女に毛布をかけられるのはまだしも、魚屋に見事にさばかれるつもりなんてないね。おいらはほんのちょっと彼に食べさせてあげたいだけだ。身体を切り裂かれて様々な問屋に持っていかれ、料理されるのつもりは毛頭ない。あれだよ、アンパンマンの原理、あの頭をちょっと差し出してヒーロー気分に浸るあれ、あれを体験してみたいってだけ。それ以上でも以下でもない。だからほっといてくれ。無理かもしれないけど、空気みたいなものだと思ってほしい。空気と呼ばれた少年が目を見開く。空気としてクラスにいる。ぼくは空気そのものだ。ぼくがしゃべったところで、誰一人それに反応してくれないのさ。だってぼくは空気なんだからね。仕方ない。いつからだろうかあきらめてしまった。ぼくは空気、だから仕方ない。空気のくせに、という声が、心の声が聞こえてくるんだ。四面楚歌みたいだ。もうダメかもしれない。ぼくはあまり強い精神を持っていない。強い肉体には強い精神が宿る。だとしたらぼくは強い精神を持っていない、つまり肉体も強くない。たちまち萎んでしまうだろう。どれぐらいもつのだろうか、わからないけれど、長くないと思う。最後に一口、大トロが食べたかったんだ。願い、叶うかな。間に合わせよう。まぐろは走る。風よりも早く。といいたいところだが、全然、風よりも、というよりようやく毛虫よりは早く、といったところ、この辺が魚類の限界だ。魚類なりに頑張っている。魚類にしては上出来だという人もいる。その人を抱きしめてあげたい。きっとぬめぬめしているのですごく嫌がられると思うけれど、かまわない。届かぬ思いを届けたいだけだ。届かなくてもいい、こちらは魚類で、ほんの少し正義感があり、歴史に名を残すだけだ。ほとんどの人は歴史に名を残すことなく朽ち果てていくのだ。そう考えるとふわふわしてくる。身体のそこからふわふわの綿が湧き出てくる。いけない。このまま綿を出し続ければ、身体の綿の部分がすべてなくなってしまい、まぐろの柔らかい部分がかすかすになってしまう。そしたら味も落ちてしまう。味の落ちたまぐろをたべさせるほどわしも耄碌しとらんわ、と大将に一喝される。つまり身体を切り取って調理してくれない。誰もたのんだ覚えはないわ。といいつつ、実際、食べる段になれば調理する誰かがいないと大変。ただ生臭い塊なんだから、それを熟練の技術で切り取ってかすかな調理を施すことで完璧な料理になるのだから。材料と料理は違う。明確に違うものだから。だからこの際、ぜひお願いします、とまぐろはたのんでみる。この身を大将に捧げます。やっちゃってください。遠慮なく、職人としての、料理人としての技術を、魂を全て込めて調理してくださいや。大丈夫、どう料理しても間違いない。なにせまだ新鮮さの立ちのぼるまぐろだ。ええ、立ちのぼっているのはなんだろう。新鮮さなのだろうか、本当に?そんなわけない。立ちのぼっているのは湯気、太陽光線にさらされて立ちのぼっている湯気。つまり調理は始まっている。
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