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目覚める夜

夜は目覚める。ぱちりと音が鳴り、月は雲に隠れる。瞬きをしている。ぱちりぱちり何度も。月が雲間から覗いている。夜はゆっくりと起き上がる。背を伸ばしてあくびをする。空に低く響いていく。夜が立ち上がる。屈伸運動を始める。リズミカルに膝を折り曲げる様子は滑稽だ。アキレス腱を伸ばす。運動不足は否めない。こんなところで切れてしまったら大変だ。入念な準備運動が終われば、水を飲む。のどを潤す必要がある。季節の変わり目は体調を崩しやすい。気をつけなくては、と夜はきつく言われている。夜にも母がいる。父は会ったことがない。母によると無口でキュートらしい。無口でキュートとはどういうことか。何も言わずに、突然どじょうすくいを踊るらしい。無口でキュートとは違う、と夜は思っている。

夜は走り出す。ポケットに小銭をつっこんでいる。少し息苦しい。やはり運動不足だと、確信する。まだまだ走れる。心臓が激しく鳴り出す。胸がはずむ。これは胸の高鳴りなのか。ただの運動不足なのか。夜は少し警戒している。胸の高鳴りだとしたら、厄介だ。高鳴りに理由がある。走りながら考える。思い出す。ちいさな背で笑う女の子の顔だ。どうしても話しかけられなかった。本当は、たくさん話をしたかったのに。夜は口べたで、それは父親譲りよ、と母は言う。そうなのかもしれない。母はぺらぺらとよくしゃべる。家の空気は母のおしゃべりでできている。それがないとなんだか物足りない。母のおしゃべりは空気とよく似ている。なくても死にはしないけど。夜は走る速度を落とす。そろそろ限界だ。もう立ち止まろうかと考える。それほど長い距離を走ったわけではない。ほとんど走っていない。けれど心臓は限界を知らせてくる。もう立ち止まらなければならない。けれどゆっくりでも夜は走り続ける。

流れる景色はいつもと変わらない。自動販売機が光っている。点々と灯りが見える。野良猫はぎゃあと鳴いている。夜を警戒しているのかもしれない。夜は猫が好きなのに、むこうからは嫌われているのか、と少し悲しくなる。話せばきっとわかり合えると思う。野良猫だって警戒を解くだろう。理解し合えることが大切だ。一度とことんはなしてみよう。いつか、野良猫とわかり合えるまで話すことも必要だ。そろそろ限界だ。ほとんど歩く速度で夜は走っている。走ることに意味はあるのか。問われると応えられない。走ることに意味が必要か。必要ないだろう。夜はそう結論づける。立ち止まる。歩こう。歩けばいいのだ。身体を鍛えるために走っているわけではない。気分次第でいかようにもなる。そうだ、狙撃手が狙っているような気がする。夜を狙って何の得になるのだ。世の中には信じられない所から利益を求めるものがいる。夜を狙うのも、そう言う理由かもしれない。だから気をつけなければ。無防備に走るべきではない。防弾チョッキが必要だろうか。通信販売で頼もう。でも今狙われているとしたら通信販売では遅すぎる。今できることを探す。そうだ、ふらふらと歩こう。撃たれてもその直後にふらつけば避けられる。理論上は問題ない。運の問題だ。そういうわけでふらふらと歩いている。

どこにむかっているのか、目的はない。ただ歩いている。自動販売機の灯りをたどっている。都合良く、自動販売機は途切れることがない。それをたどっていけば、どこかにたどり着けるだろう。その場所で、夜は持ってきた小銭を使う。自動販売機を使うのかもしれない。そこにいる誰かから、蒸かした芋をわけてもらうのかもしれない。貸し自転車を借りるのかもしれない。未知の世界が待っている。夜にはあらゆる可能性が待っている。それを逃さずに乗っていけ。夜よ、お前はまだ誰にもなっていない。ただの夜だ。夜から発展する可能性がある。昼になるかもしれない。昼になったら、と夜は想像する。想像することは自由だ。想像力は時間さえ超えられる。昼になったら、かき氷が食べたい。真っ赤な着色料のしみ込んだかき氷だ。決してうまいわけでなく、むしろ最初の一口を過ぎたらあとは惰性で口に運んでいるに過ぎないかき氷。昼ならば食べる価値がある。昼は明るく、あのどぎつい赤は、昼に黄金の輝きにもなる。そう信じている。頭でかちんと音が鳴り、鈍い痛みがやってくる。待っていたのだ、むしろ歓迎する。身体が冷えきっていることに気付く。小刻みな震え。

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