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サイレンの鳴る夜に

闇をつんざく音、仰け反ったつる子さんを抱きしめて唇をふさぐ。黙れよ。今はまだ吠える時ではない。俺がよしと言うまで待ってろ、まったくなんてだらしない子だ。耳元でささやくとつる子さん、びくびくっなって目が虚ろ。それでしばらくは大人しくしておるだろうて。油断したのもつかの間、つる子さんは小鹿のように頼りなく立ち上がり、どこかへ向かっているではありませんか。これ、これ、と呼びかけたところで無視するし、いや無視という名のわがまま娘を演じているのかしらん。どちらにせよ、人格が破綻したままさまよわすわけにはいかない。監督責任が問われる。もう一度抱き寄せて唇をふさぐ。ああ別にふさがんでもよかったわ、鳴いてへんし、思ったが止まらない。母上さま、お元気ですか。口づけの気持ちのよさを知りました。だったら、これはウィンウィンのとてもよい関係。ますます、口づけをする。つる子さんの舌は昇り龍のごとく、時にうねり時に弾み時に泣き言を漏らしつつ俺の舌を縛る。どっちが主やと思とんねんな、俺は少々腹をたてる。伝わったのか
つる子さんの舌の動きが鈍る。気に食わん、遠慮などせず攻め達磨のごとく舌先の騎士となり、俺を圧倒するのが奴隷の務めやないか。先ほどとは相反する気持ち、俺なりの矛盾を抱えて立っている、ふたつの意味で。このまま雪崩れ込むのもひとつの手、ですが、焦らして焦らして焦らすのもひとつの手、俺は策士としての本領を発揮せなあかん。選択のとき、天に祈り待ってろつる子さん、と持っていた中華あんを垂らす、ひいひい声にならぬ呻き、すぐに紅くなる首筋、その皮膚の弱さも今は愛おしい。たまらなく愛おしいのでねぶってみる。大変具合のよい中華あんである。ビジネスの香りがする。俺は中華飯店の出店を決意し、未来に想いを馳せる。なんということだろう、主としての油断、瞬く間に唇は離れ、つる子さんが破裂しそうなほどの音が漏れてくる。台風だ民よ逃げろ。
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