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飴色の魚

傷みのないところへ僕は急ぎますが、何分かけっこが遅いもので、熱帯魚はどんどん迫ってくるのです。どんどん。気づいたら肩を、僕のこの恐ろしいぐらいのなで肩を、ぐいつと掴んで、握りつぶそうとします。握りつぶした僕の肩は、ぐちゃぐちゃになって別の熱帯魚の餌となり、それを喰うと鱗から皮膚が生まれ、その皮膚は飴色をしていてとても綺麗で、そうです、とても綺麗なわけです。その皮膚を君にも見せてあげたいけれど、僕はまだ、肩を握りつぶされるわけにはいかず、なぜなら、僕の肩には、羽を休めるべき渡り鳥がとまるのだから。突然羽を休める場所がなくなっていたら途方に暮れてしまう。その衝撃を、君も想像できるでしょう?

(飴色の熱帯魚は嘘つきだ)

ところで、渡り鳥は名を虹といいます。虹は、だいたい春先にやってきます。またすぐに、とんでいってしまうのだけれど、そのほんの少しの間僕たちは話をします。とりとめもないことで、内容は何も覚えていません。だけど、だけどそれは僕にとって、とても幸福な時間であり、重要な時間です。僕はその短い会話のために一日を過ごし、一ヶ月を過ごし、一年を過ごしているような気がします。気がするだけではなく実際そうなのです。虹はおそらく僕の名前すら知らないでしょう。そういうことに興味がないのです。だけどこの恐ろしいぐらいのなで肩を必要としてくれる。

(飴色の熱帯魚は臆病だ)

僕は、君がそのとってつけたような相づちをやめるまで、永遠にしゃべりつづけるし。
ところで飴色の魚は見えましたか?
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[C188] そうか、そうなのだ

特に意識せずに書き進めてみると、どことなく、無意識の内に深層心理がにじみ出てしまっているという、驚きです。

これだから文章は偉大だ!
  • 2007-03-26 22:39
  • なゆら
  • URL
  • 編集

[C189] いつでも見えますよ

嘘つきで臆病な「飴色の魚」。それは水槽の奥、鏡になっている、あのへんにいます。とりとめのないことの積み重ねに「一日を過ごし、一ヶ月を過ごし、一年を過ごしている」のです。酸素と餌、それに「そのとってつけたような相づち」、これだけで永遠に生きられるのです。

不思議な魚なのです。
  • 2007-03-25 20:49
  • 三四郎
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  • 編集

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