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沈黙の果てで爪を切る


つあん、つあん。足の爪はカバーがついていない爪切りの中に収納されずに、切ったそばからコンクリートの地面に落ちる。ぱち、つあんぱち、つあん。風も吹かないし、音を発するものが見当たらないので、その一部始終の音が完璧に耳まで届く。悪くない。と私は感じた。何ものにも遮られずに爪を切る音と、それが落ちて地面に触れ合う音が私のものであるということがなかなか良いと私は感じた。爪を切るのを今日まで置いておいて正解だった。

私は音にまみれる場所に住んでいて、私が出す音でない音にまみれる場所に住んでいて、例えば隣に年がら年中動く工場が、ぎやんざわん、と鳴っていて、例えば下のロックンローラーは後先考えずにアンプのヴォリュームを最大にしてずぅんずううん、どぉつ、どぅつ、ビートを刻む、例えば隣の独居老人は耳が遠くて、先の音を気にしないどころか、自らテレビの音を最大というか特殊な工事して増強しているんじゃないだろうか、おまけに、自衛隊のヘリが横切る場所にある。事情が事情でしたので、私は仕方なく住んでいたのだが、その事情が事情でなくなったので、晴れてこちらに越してきたというわけだ。
ですから私は、爪を切ってぱち、となり地面におちてつあん、と聞こえた静けさに少なからず感動しているのだ。幸福なことである。
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