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しろつめ


 二度からめて輪を作ったシロツメクサを引っ張って、すぐにはほどけないようにする。
 それを何度か繰り返したら、全体が丸みを帯びてくるからその端と端をつないでできた輪を、虹のちいさな腕につけてやる。
 うわあ、と甲高い声を立てて、そのいびつな輪をまじまじと見つめ、それから僕の目を見てうんうん頷いて、屈んでいる僕に力いっぱい抱きついてきて、その勢いに僕は思わず倒れてしまう。
 虹はお構いなしに、抱きついてくるから、虹のやはりちいさな体をつぶれそうなくらい抱きしめると、とおちゃん苦しい、と搾り出すように言ったので、あわてて僕は力をゆるめて、仰向けになり、ぼんやりと空を見たのだった。
「虹、ほら雲、すごい動いてる」
 虹も僕と同じように寝転がる。
「はやいにゃ」
「どこに行くのかな」
「ジャスコじゃない」
「雲はジャスコで何するんだろう」
「ボーレンジャーにあいにいくんだ!」
 その日、ジャスコでボーレンジャーショーをやっていて、虹のクラスでも大人気のヒーロー戦隊ものショーだから、当然話題になっていて、誰々と誰々は見に連れて行ってもらうのだと鼻を膨らませて話していたのだ。
 じゃあ虹もいきたいの?と尋ねると、うんにゃ、と否定とも肯定ともとれるあいまいな返事をして僕を困らせた。
 それ以外に何も言わなかったから僕は、きっと虹はみんな騒いでいるから一度どんなものか見てみたい気がするが、結局それほど興味もないしなあ、とという板ばさみの中にあって、それなら、別に連れて行かなくてもいいか、だって俺見たくないもん、て勝手な解釈をさせてもらうことにした。

 かわりにと言っては何だが、川原に背の低い草に一面覆われているところがあって、市民はよくそこで犬と戯れたり、キャッチボールをしたり、なかなかほのぼのと過ごせそうなところがあって、僕もぜひそうさせてもらいましょうと考えていたので、そこに虹を連れて行くことにした。

 朝早くだというのに、すでに結構な人手で、僕はいくらか面食らってしまったけれど、それはそれ、世界に入ってしまえば人ごみも気にならないのだ。
 僕はクローバーの上に寝転がって4つ葉をさがし、それから群れているしろつめくさで虹に腕輪を作ってやろうと思いついて、その思いつきがとても素敵に思えて、小躍りになりながら適当な長さのを摘み、輪を作り、虹の腕にはめてやったのだ。
 虹は何も言わないけれど、考えていることはなんとなくわかって、でも僕できることはどんなことだろう、と考えているうちに、僕はそのシロツメクサをきつく結んでいた。
 つないだ手を固く結んでその腕の白つめ草の腕輪に虹の願いをこめた、この腕輪がいつまでもほどけませんように。願った瞬間、虹は腕輪を引き裂いて空に投げた。ぐおおおという雄たけびとともにシロツメクサは空に舞っていた。きっと舞い上がってジャスコにボーレンジャーを見に行くんだと思った。
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