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鹿よ 続

「鹿は電車に乗れない2」


 駅に到着し、電車を降りる、改札口を通り抜ける、駅から出て奈良を見渡す間もニーチェは鹿の人を探している。いつもだったらこの辺にいても可笑しくないはずなのに、やっぱり休日だからか、ひとりごとを私に聞こえるようにつぶやいている。その執念深さが可愛らしいと感じる。だから、私は彼に惚れている、と確信してしまう。
 「ほら、いくよ」と手を引き、ニーチェを連れて改札口から町に降りる。公園に向かって歩こう、とニーチェが言う。私は市バスで行くつもりだったし、この日差しなんだからちょっとは考えてものを言いなさいよ、と思ったが、まあ今日は彼の提案でここにきたのだから、最後まで従ってみることにした。
 奈良の日差しは観光客に対して二割増しに降り注ぐような気がする。
 ゆっくりと歩いていると、彼はなおもおかしいなあおかしいなあとつぶやいている。ハイハイ、すぐに会えるからちょっと落ち着きなさいよ、と私は彼の手を引く。ニーチェと手を繋いで歩くのはちょっと嬉しい。蝉の声が高らかに空に響いて、そのすき間をぬって遠くの方で鐘を突く音が聞こえた。
「趣あるねえ」
「そうか?」
「奈良にきたって感じがしない?」
「いや、でもあれ、一番偉い人が怒ってると言う自己主張やで」
「は?」
「偉い人シャイやから、怒ってるってことを鐘を突いて知らせるの」
「町中に?」
「そう、わいは怒ってんねんで!」
「わい、て」
「たくさん鳴るほど怒ってるわけ」
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