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「体にアンパンを乗せたのではなくアンパンから体が生えてきたのです」

アンパンが吊ってある。
パン食い競争のそれに良く似ている、が決定的に違うことは単独であるということ。パン食い競争であれば、単独であるはずはない、競争しなければならないわけであるし、このあたりは一面砂漠であるし、ここで運動会を行うような稀有な団体はいない。アンパンが単独でひとつぶらさがっている。風もなく、ひくりともせずにただぶら下がっているだけである。
ここにおいて時間の経過は曖昧なものであり、正確な時間は全く意味を成さないが、それでもかなりの時間が経過している。パンは乾燥地帯であるがゆえに黴を生すことこそないが、非常に堅くなり、黒く変色している、中に詰まっている餡は水分が抜け、すかすかであろうと思われる。実際に食していないため正確に言うことはできないにしても、そうであることは容易に想像できよう。そして通常のアンパンであれば、そのまま乾ききって砂と成ってしまうところであるが、ここにあるアンパンは違った。
アンパンがゆらゆらと動きだす。
水があるように見える、ゆらゆらと湖が見える、という目の錯覚ではなく、実際に小刻みではあるが、非常にゆっくりではあるが、確実に動いている。風ではない。もしもあるとしても、風による動きではない。前後左右上下に生物のように揺れ動いているのだから。それは決して規則的でなく、生物の不条理な動きに見える。
やがて、アンパンの下の部分にひび割れができる。乾ききったためのひび割れではない。その内部から内やぼろうとする生命力にあふれている、割れた内部からは威勢のよい胎動が聞こえる。胎動はどくんどくんというそれではない。この胎動を言葉で表すことは難しい。胎動であることに気づくものはおそらくいないであろう。あえて文字にしてみると、おーろろろろろろろおーろろろろろろろ、というものだ。これで言い表せたように思うかもしれないが、違う、おー、の間にベースラインが先行して、ろろろ、を待つ、喫茶店でパフェを食べながら待つ、ろろろに入ると入ったでドラムロールが聞こえ、盛り上がりを見せた後、突如として静寂が訪れ、再びおーがはじまる。それもやはり規則的でなく、おーが始まるたびに進化を遂げ、変調し、もっと言えばボーカルが挟まれることもある。歌っているのはもちろんアンパンである。なぜなら、それしかないのだから、他に歌うものはいないのだから、そうであるとしかいえない。おーを繰り返すうちボーカルは次第にはっきりとしてくる。
「勇気だけが僕の友達さ」という絶叫だった。
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