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その3(回転寿司編)

向こう側を回る大トロの握りを狙うように見つめながら、ずずーっとマグロはお茶をすすった。
決してカウンターのみの職人がいる寿司屋には行かない、というのがマグロなりの流儀だった。入ってもよい寿司屋は皿が回っている寿司屋のみ。それは単に金銭的な理由からそうしていたのかもしれない。
マグロが来店してから、当の回転寿司屋の人気皿大トロは全く食べられなくなった。
当然である、時価にして300万の立派な黒マグロであった。
マグロを見た後では、目の前を流れる得体の知れぬ大トロがとても貧相に見えた。
寿司屋の大トロを食べるものは、もうマグロだけだった。マグロは醤油をほんの少しつけ、トロの甘さを舌で味わうように噛み、飲み込んだ。
隣に座った家族連れの中の女の子が、マグロを指差して「シゲ子さん、魚介類は、お箸の持ち方知らんのね」と言った。
マグロだと認識されなかった自分を恥じたのだろうか。
あるいはマグロに箸の持ち方を教えてくれたニホンザルへの怒りを露にしたのだろうか。
あるいはわさびが利きすぎていたのだろうか。
マグロは、ぬるくなったお茶をぐいっと飲み干し立ち上がり、けーん、と鳴いた。お勘定、と言いたかったのだろう。
気付いてやってきた店員は皿の数を数え、それに見合った分のマグロの身をそぎ落として、ありがとうございます、と言った。うなづいてマグロは自動扉を開けた。外から吹いてきた強い風のせいで、マグロの血の匂いが回転寿司屋一面に広がった。
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