FC2ブログ

Entries

その9(献血編)

「その9(献血編)」

 街の中心部、駅前に停まっている。献血車の中で、ひときわ大きな声が聞こえてくる。
 「無理なんです、どうしても無理なんです」
声を上げているのはセンターの職員、献血をしようとやってきたものを拒んでいる。
 当然である、やってきたのは時価にして300万はするであろう立派な黒マグロであった。
 マグロとしては王様級だとしても、献血をする対象としてはちと問題がある。センター職員の主張も無理はなかった。しかしマグロ、一歩たりとも譲らずに献血をしようとする姿勢はまことにあっぱれ立派であった。黒マグロであるということを超えて、人としてあっぱれ立派であった。
 互いに譲らずに時間だけがすぎていった。献血に来る人はマグロを見てはよだれを垂れ流した。どれが血でどれがよだれでどれが消毒液かわからなくなっていた。
これでは、献血どころの話ではない、とそこにいる誰もが感じた。
 譲れない、という文字が互いの額に浮かび上がったとき、突然まぐろは血をためている紙パックのようなものを掴み取り、その個性的な口にくわえ、ごくごくと飲みだした。裏返しだ。やさしさの裏返しがまぐろにこのような行動を取らせたのだ。目は笑っていなかった。
スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://nayura06.blog27.fc2.com/tb.php/867-6f346fef

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

なゆら06

Author:なゆら06
FC2ブログへようこそ!

月別アーカイブ

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR