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その10(マジックショー編)

「その10(マジックショー編)」


その手つきは実に鮮やかであった。
あまりにも華麗なそれは、時としてひらひらと舞う蝶々に見えた。
マグロはトランプを切りながら観客のひとりをステージに上げ、カードを一枚選ばせた。
観客が選んだカードはスペードのキングであった。
マグロはそのカードを見ないようにデック(トランプの束)に戻し、再び丁寧に切り始めた。しゃしゃしゃしゃと会場に音が響いた。バックグランドミュージックは流れておらず、静まり返った会場にただとランプを切る音が響いていた。誰も声を上げることはなく、ただマグロに熱い視線を送りながらよだれを垂れ流していた。
無理もない、時価にして300万はするであろう立派な黒マグロであった。
マグロはトランプを入念に混ぜた後、綺麗な扇形に広げ、その扇で自らを扇ぎ始めた。誰しもがよだれをとめることはできなかったしかしやはり誰しもが、そのしぐさに妖艶な色気を感じていた。そのゆったりとした南国のような空気を、ふいにマグロがトランプを投げてぶち壊す。トランプは舞いぱらぱらと音を立て次々に落ちる。最後の一枚が落ちたときであった(ちなみに最後の一枚はクローバーの4だった)。マグロはすでにその場にいなかった。忽然と消えたのである。
間があいて、割れるような拍手が会場を包み込んだ。
拍手をしながら、観客の誰しもがこう考えていた。「スペード・キングの立場は?」
答えは特にない。
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