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飴の中に閉じ込められたりんごちゃん

齧られる。その度にお尻がうずうずなるの。で、もう一口うずうず、いっそのこと全部丸ごと齧ってほしいけれど、飴が邪魔をしてしっかり齧れないって。わかる。口の周りは赤くねばねばになってるし、それを拭えば手や腕がねばねばで、ねえばねばはどんどん伝染していく、そのうちにねばねばが体全身を覆って、赤くねばねばの人の出来上がり。彼はねばねばのまま銭湯に行けば、先客からにらまれて、お前そのままで入る気かこの礼儀もマナーもなんにもわかっちゃいねえ若造かどうかもわからねえ、ねばねばのおばけで赤くて、てかってら。俺は齧るよ、お前を齧りたくなってきた妙に齧りたくなってきやがったもう我慢できねえ、それを齧って、生ビールを一気呵成に流し込めば、すぐに出来上がるってやつだ。湯冷めしないうちにカアチャンのとこに帰るって寝る。カアチャンは早かったわねとかなんとか、言いながら押し入れの方に気が取られてるんだ、あ、こりゃ間男だって俺だってわかるよ、俺も経験あるし。お前なにしてんだって怒鳴ったり野暮なことはしねえ。しねえよ。俺は忘れもんだ、って外へ飛び出すね。通りかかったダンプカーにぶしゃ。キー、ってブレーキふんでも遅いわな。俺はもう肉のかたまりだ。意識もなんにもないところに立っている。ぼんやり見ている運転手は徐々にやばいことになったと青くなる。大丈夫、俺は痛くないし、怒ってないから。いつでも死ぬ覚悟はできてるってこと。

整える石川芙美子

石川芙美子は家政婦だ。
家政婦のプロフェッショナルだ。
担当する家を整えていく芙美子は美しい。
汗ひとつかかずに整える。
無駄な動きはない。
歩いていく芙美子の手は高速で動いているため見えない。
うっかり無知な誰かが手を近づけようものなら、けがをする。
もしかしたら切断されるかもしれない。
危険だから芙美子が仕事をしているときはおとなしく見ていること。
近づけば安全は保証しません。
ばばばと肉片になりたくなければ、ソファに座っていなさい。
そして奇跡を目撃するのです。
あなたは幸運だ。
奇跡はそう簡単に訪れたりしない。
けれどもここに訪れるのです。
祈ろう。
ほら、芙美子はゴム手袋をはめて、口紅をひいている。
紫の口紅は芙美子によく似合う。
いっさい妥協がない。
めがねはかすかに色が入っていて、UV加工がほどこしてある。
屋外の仕事もある。
芙美子ぐらいの家政婦になれば庭も整えるからね。
庭職人もかねている。
もちろんうまい食事を用意できる。
芙美子が作る料理は健康面も考えられている。
料理人もかねている。
栄養士もかねている。
時々胸が大きく開いた服を着てくる。
割烹着の下は下着だけということもある。
妻もかねている。
同じ昔話を何度も初めて聞くように聞いてやる。
孫もかねている。
電話をしてオレオレと言い金を巻き上げる。
詐欺師もかねている。
フリスビーを投げれば追っていき、宙でキャッチする。
犬もかねている。
口に洗濯物と洗剤を入れれば数十分で洗って脱水までしてくれる。
洗濯機もかねている。
目撃した殺人現場の様子を思い出して自分で整理する。
刑事もかねている。
芙美子は世界を作り、人間を作り、秩序を作った。
神もかねている
芙美子は社会を整える
芙美子は世界を整える
芙美子はあなたを整える
芙美子はあなたを整える
芙美子はあなたを整える
リピートアフターミー、芙美子はあなたを整える
芙美子はあなたを整える
ふみこはあなたをととのえる
ふ・み・こ!
ふ・み・こ!
芙美子を信じなさい、さあ芙美子の整えた壷を与えます
芙美子に捧げなさい
芙美子の割烹着のポケットの中に捧げなさい
たくさん捧げれば、たくさん整える
列を作り捧げなさい
順に並び捧げなさい!
列を乱すものは、芙美子に整えられるぞ!

脱げない仮面

脱げないので、そのまま街に出た。すれ違う人すれ違う人、驚愕する。不気味なものに出会ったという顔をする。私がかぶっている仮面は狐で、鼻がぴんと尖っている。下はミニスカートをひらひらさせながらスキップしてるからたしかに異様だ。母親は子が興味を持たないように歩を早める。多分呪いだ。由緒ある寺に飾ってあったのを、坊主が座禅組んで集中している隙にくすねてきた。なんか古めかしくてほしくなったんだよね。仮面がそうさせたんだろう、わしを手に取り盗め、そして付けるのじゃ、と声は聞こえないけどそんなことを言われているような気がしたんだ。家に帰って鏡の前に立ち、仮面をつけてみたが、何か変わった感じもしなかった。やはり気のせいか、と外そうとした。外せない。仮面をつかんで外すだけなのに手が動かない。大きな力で押さえつけられているようだった。低い笑い声が聞こえて、してやったり、とつぶやかれた気がした。途方に暮れようにも、仮面があることが当たり前のような気さえしてきて、そのまま生活することにした。仮面があって顔を洗えないし、ものを食うこともできない。仮面はぴったりと私の顔に張り付いている。ほとんど皮膚感覚だ。突然右頬が痒くなる。仮面の上をかりかりやると、心地よい。仮面の上だから歯がゆい思いをするのではなく、右頬を直で掻いているような感覚だ。すばらしい。吸着している。仮面はすでに私の一部になっていて、今後、私はこの仮面とともに生活をする。世間は冷たいだろう。それはわかる。狐の仮面をかぶったまま、日常生活を送っているなんて、在宅仕事を中心にして、極力人と会わないようにするしかない。それだったらなんとか成り立つ。けれど、現在、私は学生で、恋人もいるし、授業に出ないと単位はもらえない。狐の仮面がとれなくなったから授業に出られませんは認められないだろう。仮に仮面のまま授業に出るとして、それとりなさい、となるのは必至で、いやとれないんですこれ呪いで、とか言い訳しようものなら、自分が馬鹿にされたと激怒して出て行け、と言われるのがオチだ。素直に出て行って二度と授業を受けられないのは残念だ。少しは抵抗してみよう、じゃあ外してくださいよ、とか泣きつこう。ひとしきり引っぱり、なるほどこれは呪いやわ、と理解されたとしても、じゃ病院紹介するわと紹介された病院に行くと、いきなり手術台にのせられて、麻酔されて仮面と皮膚を切り離す手術をはじめられるかもしれない。無駄無駄、呪いなんだから、切り離したところで、包帯を取って2週間後には再生してるんだから。皮膚と同じようなもの、いやそれ以上に強力な呪いなんだから。普通はさ、皮膚取ったら、別の皮膚を移植してこないといけないけれど、仮面は再生する。プラナリアの遺伝子が入ってるからね。切っても再生していく。なるほど無敵じゃない。無敵。どけどけお狐さんが通るよ。どかぬ輩は踏みつぶすぞ。

舌切り雀

舌を切られても雀は痛くないんだよ。あいつらはね、舌に感覚がないんだ実際。むしろ邪魔なんだ、舌を出すとどうしても愛嬌が出ちゃうしね。ぴしっと決めたい場面で思わず出しちゃうもんだから迷惑なんだ。だから嬉しかったんじゃないかな。糸切りばさみでばっさりいっちゃった時なんか、半笑いだったし。気味悪かったよまったく、やってるこっちが被害者なんじゃないのかね。だらだら血が流れ出すじゃない、まだ笑ってんの。もう逃げ出すよね思わず。追ってくるんだよあいつら。どこまでもどこまでも追ってきてはなにもしない。どうしたいの、って言うよねとりあえず、確認したいじゃない。でも、なんにも言わないの。ただ笑ってる。そのうちさ、寂しいんじゃないかって思ってしまってね、こいつ悩みなさそうに笑ってるけどさ、けっこう悩んでるんじゃないかって。いかんいかん、同情なんてしたらつけあがるだけ、同情につけ込んで金巻き上げる可能性もあるじゃない。知恵のない動物に同情は禁物よ。

追ってきて無害かって思ってたらこれが、肩叩いてくるじゃない。ねえねえって言いながら叩いてくるから、とりあえず振り向くよね。そしたら、だらだら血を垂れ流しながら言うのよ。わたしきれい?って。いやいや、まったくきれいじゃないし、怖いし、もうほっといてほしいから、きれい、って応えるでしょ。そしたら、これでもきれい?ってマスクを外して裂けた口を見せてくるの。ポマードポマードポマードすぐさま唱えて駆け出したわ。いや雀、最初から口裂けとるわ、とは思わなかった。ただその空気が怖かった。後ろでけたけたけたけた、笑い声が聞こえた。逃げ後れた恵子はその後学校にも出てこないし、家にいっても母親はうなだれたままなんにも教えてくれない。あれは現実だったのかな、って今は思ってる。

熟慮の悪魔

考えるとわかる、と小人は言った。そういうものか、と僕は思った。小人はもうチキンソテーを食べている。それちょうだい、と僕は言いたいけれど言ってはいけない。だって言ってしまったら、小人と間接キッスしてしまって、そうなると僕が小人になってしまう。そう言われて育った、小人にはなりたくない。小人って不幸?というか、余計な気苦労があるから、そんなことは感じたくないよ。考えたってね、わからないことはたくさんあるんだよ、って思うけど。考えれば考えるほどわからなくなることだってある。

それは悪魔のせいさ、と小人は言った。そういうものか、と僕は思った。小人はチキンソテーのぱりぱりに焼かれた皮を丁寧に切って、口に運ぶ。ゆっくりそしゃくしてその食感を楽しんでいる。それちょうだいと相変わらず言いたいけれど言ってはいけない。小人と間接キッス。僕小人。悪魔がなにかしらの魔法をかけて考えてもわからないようにするんだ。そういうときはね、悪魔の嫌いなゴーヤチャンプルーを食べるといい。すぐに作ってあげるからね。

小人の作ったゴーヤチャンプルーはうまいに違いないけれど、それを食うと、僕小人。小人は必ず味見をしているから、間接キッス。だから食べたくはない。悪魔の魔法をかけられたとしても、だ。悪魔だって話せばわかるはず。悪魔にも感情があるだろうから。ゴーヤチャンプルーは苦手なようだから、焼きチーズなんかどう?ワインに良く合うよ。

いけない悪魔と話すのは非常に危険だ、と小人は言った。うるさいよ、と僕は思った。チキンソテーはもう平らげてしまって横に付いていた人参を嫌そうに食べた。そんなに嫌ならのこしゃいいのに。それは僕もいらないけどね。僕小人。小人と同じ空気を吸っていればそのうち小人になる。悪魔と話せばきっと悪魔のことが好きになるだろう、悪魔はとても話がうまいからね、悪魔の話術は、興が乗ったときの落語家のそれに非常に近い。興が乗ったときの落語家だよ。この場合の悪魔と落語家は同一人物だ。

同一人物なんだ、と小人はもう一度言った。なわけあるかい、と僕は思った。

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